日本の民話 第202話  げんこつのほうび



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    むかしむかし、ある国の殿さまが、
    《珍しい物を持って来たら、ほうびをとらせる》
    と、おふれを出しました。
     それを聞いた人たちは、珍しい物を持って次々と城へ出かけました。
     でも、色々と珍しい物を持っている殿さまは、
    「こんな物、ちっとも珍しくない」
    と、みんなを追い返してしまいました。

     さて、この国にカブを専門につくっているお百姓(ひゃくしょう)さんがいました。
     お百姓さんは大きな大きなカブをつくろうとして、長い間、苦労を重ねてきました。
     そしてその苦労が実って、大きな岩みたいなカブが出来たのです。
    「これなら、あの殿さまも見た事がないだろう」
     お百姓さんは近所の人に手伝ってもらって、そのカブを荷車に乗せると城へ運んで行きました。
     ところが城の門番が、
    「カブなんて、ちっとも珍しい物ではない」
    と、中へ入れてくれません。
    「でもこれは、おらが一生懸命に育てたカブです。
     こんな大きなカブは、どこを探しても他にありません。
     一目だけでも、殿さまに見ていただきたいのです」
     お百姓さんがあまりにも頼むので、門番は殿さまに大きなカブの事を話してくれました。
     すると、殿さまは喜んで、
    「すぐ、持って来るように」
    と、言いました。
     それを聞いた門番は、急いで戻るとお百姓さんに言いました。
    「わしのおかげで、どうにか殿さまが見てくださる事になった。わしのおかげでな。・・・いいか、もしほうびをもらったら、わしにも半分寄こせよ。何しろ、わしのおかげなんだからな。わかったな!」
    「はい、しょうちしました」
     お百姓さんは、城の庭へ荷車を引いて行きました。
     殿さまは荷車の上のカブを見て、とても目を丸くしました。
    「これは珍しいぞ。よくぞここまで、カブを育てたものだ。ほうびをとらすから、何でも欲しい物を言うがよい」
     でも、お百姓さんはほうびよりも、あの門番をこらしめてやろうと思いました。
     そこで、殿さまに訳を話して、
    「おらに、げんこつを十個ください」
    と、言ったのです。
    「よし、よし。そう言う事なら、げんこつをあげよう。もっと近くへ来なさい」
     殿さまは、お百姓さんの頭をやさしく十回叩いて言いました。
    「お前は正直者だ。本当のほうびは、あとで届けてやるからな」
    「ありがとうございます」
     お百姓さんは喜んで荷車を引くと、城の庭を出ていきました。
     門のところへ来ると、門番が待ちかねた様に言いました。
    「どうじゃ。殿さまにほうびを頂いたか?」
    「はい、おかげさまで」
    「よし。それじゃ約束通り、ほうびの半分をもらおうか」
     門番はお百姓さんの前に、両手を突き出しました。
     そのとたん、お百姓さんはこぶしで、門番の頭を思いっ切り殴りつけました。
    「あいた! な、なにをする!」
    「おらが殿さまからもらったほうびは、げんこつが十個だ。半分やるから、覚悟しろ!」
     お百姓さんはこぶしをにぎりなおすと、あと四回、門番の頭を殴りつけました。
     これには門番もたまらず、そのままひっくり返ってきぜつしてしまいました。
    「ははーん。ざまあみろ」
     気の晴れたお百姓さんは、ニコニコしながら家に帰っていきました。
     そして家に帰ると、すぐに殿さまからのほうびのお金が届きました。
     お百姓さんはそのお金で、村人たちにごちそうをしたという事です。
       おしまい








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