日本の民話 第71話 炭やき長者



    (出典 i.ytimg.com)


    むかしむかし、ある村に長者(ちょうじゃ)が住んでいました。
     この長者はとても大金持ちですが、ひどいけちん坊で、人の為にお金を出した事が一度もないのが自慢です。
     そのくせに、ただでもらえる物は、たとえゴミでももらって来るのです。
     そしてそんな調子で貯め込んだ小判を、長者は夜になると土蔵(どぞう→そうこ)の中で一枚一枚数えるのが大好きでした。

     ある日の事、いつもの様にお金を数えていた長者が首を傾げました。
    「あれ? おかしいぞ」
     大切にしまってある小判が、一枚足りないのです。
     そして次の日になると、また小判が一枚足りないのです。
    「もしかすると、泥棒に盗られたのかもしれない」
     そこで長者は、次の夜から土蔵を見張る事にしました。
     長者は土蔵のかげに隠れてジッと待っていますが、誰一人やって来ません。
     ところが真夜中になった頃、土蔵の中からヒソヒソと話す声が聞こえて来たのです。
    「土蔵には、誰もいないはずだが」
     長者は土蔵の中を覗いてみて、びっくり。
     何と長者の大切な小判たちが集まって、
    「おら、もうこの家にいるのは嫌だ。ここの旦那は、人にお金をめぐむという事を知らない」
    「そうだ、そうだ。貯めるばかりで使う事をしない。こんな家は、早く逃げ出してしまおう」
    と、話し合っているのです。
     長者は慌てて、土蔵の中に飛び込みました。
    「待て! 待て! お前たちはわしの物だ。もう一枚も、どこへも行かさんぞ!」
     しかし小判たちはいっせいに動き出して、ジャラジャラと土蔵の外へ出て行ったのです。
    「こら! 待てー!」
     長者は追いかけましたが、小判たちはあっという間に姿を消してしまいました。

     さて、山奥まで逃げて来た小判たちは、
    「こうやって逃げて来たのはいいが、これからどこへ行こうか?」
    と、立ち止まりました。
     すると、一枚の小判が言いました。
    「この山に、炭焼きの藤太(とうた)と言う男がいる。藤太は貧乏なのに大変な働き者で、困った人の面倒もよく見るという話だ」
    「そう言えばこの間も、炭を焼いて一生懸命に貯めたお金を、病気で寝ているおじいさんにそっくりあげたそうだ」
    「よし、それならみんなで、藤太のところへ行こう」

     そんな事とは知らない藤太が、次の朝に起きてみるとどうでしょう。
     炭小屋の前に、キラキラと光り輝く小判が山の様に積み重なっているではありませんか。
     藤太は大喜びで大判小判を拾い集めると、さっそく困っている人たちに小判を分けてあげました。
     それから残ったお金で家を建てて、可愛いお嫁さんをもらいました。
     そして気前の良い藤太の事が町で評判となり、藤太の売る炭が飛ぶ様に売れました。
     やがて藤太は村一番のお金持ちになり、みんなから『炭焼き長者』と呼ばれる様になったそうです。
       おしまい








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