怪談百物語 第94話 ヘビダコ



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 むかしむかし、十歳になる文四郎(ぶんしろう)という村の子どもが友だちと浜辺で遊んでいると、浜の松林の中にある地蔵堂の裏から、小さなヘビがたくさん出てきました。
「わぁーっ! ヘビだ、ヘビだ! 殺してしまえ!」
 文四郎は叫んで、棒切れを手にヘビを追いかけました。
 ほかの友だちも追いかけましたが、ヘビはすばやく岩の間の海に入って泳ぎ出します。
「逃がすなー!」
 文四郎たちは着ているものを脱ぎ捨てると、岩の間を上手に泳いで逃げるヘビを追いまわしましたが、老曾岩(おいそいわ)という岩のところへ来たとき、ヘビはおかしなことに、とつぜん自分の長いからだを海の中のとがった岩の角に、はげしくぶつけはじめたのです。
 するとヘビのしっぽは何本にも裂けて、海の水が黄色ににごってきました。
 文四郎は手にしていた棒切れでヘビの頭をたたき、弱ったところを棒の先につるして、海の中からひきあげました。
「おや? これは何じゃ?」
 なんとヘビは、タコに変身していたのです。
 何本にも裂けたしっぽはタコの足になって、吸盤の小さなイボイボまで付いていました。
 頭は丸くふくらんで、やわらかいタコの頭になっていました。
 完全にタコの姿ですが、変身の途中で文四郎に殺された為か、そのタコの足の数は本物のタコよりも一本少なく、七本だったのです。
 それ以来、このあたりの海では八本足のタコも七本足のタコもよくとれますが、村の漁師たちは七本足のタコがとれると、いくら立派なタコでも、
「こいつはヘビが化けた、ヘビダコじゃ」
と、いって、決して食べないという事です。
    おしまい