怪談怖い昔話 第241話 しょうじにうつる大ギツネ



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 むかしむかし、遠野郷(とうのごう→岩手県遠野市)の附馬牛(つくもうし)というところにある家があり、その家の娘が病気でなくなりました。
 それからというもの、毎晩娘の幽霊(ゆうれい)が出るようになったのです。
 娘の幽霊は、うすぼんやりとしょうじにうつります。
 すると眠っていた家の人が、苦しそうにうなされるのです。
「あのやさしい娘が、わしらを苦しめるはずがない。これはひょっとしたら、キツネのしわざかもしれんぞ」
 家の人たちは、村の人たちに相談してみました。
「よし、それなら、おれたちが見はりをしててやる」
 元気のいい若者が何人か、ウマの小屋などにかくれて見はり番をはじめました。
 ところが気味が悪くなったのか、みんな逃げかえってしまいました。
 この家のとなりに、なくなった娘の兄が住んでいましたが、わけを聞くと、
「もし本当の妹が幽霊になってくるのなら、いっぺんあってみよう」
と、言って、実家へといきました。
 ものかげに身をひそめていたところ、真夜中ごろ、奥座敷(おくざしき)のしょうじがボーッとあかるくなりました。
 兄はビックリしましたが、よくよく目をこらして見ると、それは妹の幽霊などではありません。
 一匹の大ギツネがしょうじにからだをくっつけて、座敷のようすをうかがっているのでした。
 兄は音をたてないように床下をはっていって、ワラうちの木づちで大ギツネをたたきつけました。
 ゴン!
 たしかに手ごたえがあったものの、大ギツネそのまま逃げてしまいました。
「まて! この悪ギツネ!」
 兄は追いかけましたが、山の中で見失ってしまいました。
 大ギツネが何をねらってきていたのかはわかりませんが、それから娘の幽霊らしいものは出なくなったという事です。
     おしまい