2020年07月



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    日本の民話 第320話 オオカミの恩返し



    (出典 tg-kids.net)


     むかしむかし、ある山の中の一軒家(いっけんや)に、お母さんと息子が暮らしていました。
     二人はひどい貧乏だったので、お母さんも息子も毎日毎日働きづくめです。

     ある日の真夜中の事、お母さんが急の病(やまい)にかかって苦しんでいました。
     医者は、山の向こうの里にしかいません。
     それに山にはたくさんのオオカミがいるので、夜になると誰も外に出ようとはしません。
     ですが息子は、お母さんの病気を治したい一心で出かけました。
    「お願いだ。オオカミよ、どうか出ないでくれ」
     息子は神さまにいのりながら山道を急ぎましたが、やっぱりオオカミは出てきたのです。
     一匹の大きなオオカミに、まっ赤な目でにらまれた息子は、
    「オオカミよ、今だけはおらを食うのをかんべんしてくれ。おっ母さんが、病気で苦しんでいるんだ。お医者さまを、連れて来ないと。だからたのむ、見逃がしてくれ」
    と、言いましたが、オオカミはこっちへ近づいてきます。
    「たのむ。お医者さまを連れて来たら、きっと食われに来るから」
     息子は泣いてたのみましたが、オオカミはどんどん近づいてきます。
     オオカミの息が顔にかかったとき、息子は目をつぶってオオカミに食べられるのを覚悟しました。
     ですがオオカミは、かみついてきません。
    (もっ、もしかして、見逃してくれたのか?)
     息子がゆっくりと目を開けると、オオカミはやっぱり目の前にいます。
    「ヒエーッ!」
     息子は再び目をつぶりましたが、オオカミはその場にジッとしています。
    (どうした? どうして、かみつかないんだ? 何か、言いたい事でもあるのか?)
     不思議に思った息子がオオカミを見ていると、どうもオオカミの様子がおかしいのです。
     舌をベロンと出して口を大きく開けたまま、何度も頭を下げたり上げたりしています。
     どうも、口にある何かをうったえている様子です。
     息子がオオカミの口の中をのぞいてみると、キラリと光る物がありました。
    「おや、のどに骨が刺さっとるぞ」
     息子はオオカミののどに手を入れて、刺さっていた骨を抜いてやりました。
     するとオオカミは何度も何度も頭を下げて、そのまま立ち去っていきました。

     息子は何とか無事に医者の家をたずねたのですが、医者はオオカミを怖がって外に出ようとはしません。
     そこで息子は薬だけをもらって、急いで山道を引き返していきました。
     すると今度は四、五十匹ものオオカミが息子に寄って来て、するどいキバを息子に向けました。
    (ああっ、今度こそだめだ。おっ母さん。すまん!)
     息子が覚悟を決めたその時、突然大きなオオカミが飛び込んで来て、取り囲んでいるオオカミに向かってほえました。
     すると息子を取り囲んでいたオオカミたちは、一斉(いっせい)にどこかへ行ってしまいました。
     この大きなオオカミはさっき息子が骨を抜いてやったオオカミで、オオカミの大将だったのです。
     息子はオオカミの大将に守られながら、無事に家に帰ることが出来ました。

     次の朝、息子が家を出ようとすると、家の前にイノシシやウサギやキジなどの獲物(えもの)が、山のようにつまれています。
     息子はそれをふもとの里に売りに行き、たくさんのお金を手にすることが出来ました。
     また、お母さんの病気もすっかりよくなったので、二人は幸せに暮らすことが出来ました。
       おしまい








    (出典 amd.c.yimg.jp)



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