2021年04月


    日本の怖い話 第120話 大蛇とお尻


     むかしむかし、ある旅人が宿屋を出発しようとすると、宿屋の主人が声をかけました。
    「お客さま、今からあの山を登って行くのですか?
     それでしたら、くれぐれもお気をつけください。
     実はあの山には、人食い大蛇が出るとのうわさです」
     すると旅人は、内心おびえながらも、
    「平気平気。もし大蛇が出たら、反対におどかしてやりますよ。あはははは」
    と、強がりを言いました。

     さて、宿屋を出発した旅人は、やがて山頂近くに到着しました。
    「何だか、薄気味悪い山だな。
     これはもしかすると、本当に大蛇が出るかもしれないぞ」
     ここから先は、細くて薄暗い道が続きます。
    「・・・急ぐ旅でもないし、いったん戻ろうかな?
     ・・・しかし、意気地なしと思われるのも嫌だし」
     怖くなった旅人は、どうしようかと迷いましたが、
    「やっぱり、地元の人間の忠告は聞かないとな」
    と、やって来た道を振り返りました。
     すると振り返ったところに大蛇がいて、大きな口を開いて旅人を飲み込もうとしたのです。
    「うぎゃーー! 出たー!」
     旅人は持ち物を放り投げると、一目散に逃げました。
     すると大蛇も負けずに、旅人を追いかけて来ました。
    「わあ、わあ、どうすればいいのだ!?」
     旅人は少しでも大蛇が遅れる様にと、着ていた服を一枚一枚脱いで大蛇に投げつけました。
     すると大蛇は投げられた服をパクリパクリと食べて、食べ終わるとまた旅人に襲いかかって来たのです。
     こうして旅人は最後のふんどしまでも投げつけたのですが、大蛇はそれもパクリと食べてしまうと、また旅人に襲いかかって来ました。
     旅人は必死で逃げますが、どうしても逃げ切る事が出来ません。
     旅人の足がついにもつれて、旅人はお尻を丸出しのままで倒れてしまいました。
    「わあ、もう駄目だ!」
     旅人が、お尻を突き出したままブルブル震えていると、大蛇は旅人のお尻を見てびっくりして、どこかへと逃げてしまいました。
    「たっ、助かったのか?!」
     何とか助かった旅人は、無事に宿屋へ逃げ込む事が出来ました。
    「しかし、おれは、どうして助かったのだろう?」
     話を聞いた宿屋の主人も、その理由が分かりませんでした。

     実はあの大蛇、旅人の丸出しのお尻を見て、大きな口を持った化け物だと勘違いして逃げ出したのです。
        おしまい








    (出典 moneytalk.tokyo)



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