日本の民話 第50話 節分の鬼の恩返し



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節分の鬼 Ver1,0

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むかしむかし、ある貧乏なおじいさんが、節分の豆まきをしながら思いました。
「福は内と言っても、福の神が家に来る事はない。それならいっそ、今年は鬼を呼んでみよう」
 そしておじいさんは、大声で叫びました。
「鬼は~内! 福は~外!」

 するとその夜、誰かが家の戸を叩きました。
「こんばんは。『鬼は~内』と、鬼を呼んだのはこの家かいのう?」
 なんと、鬼がやって来たのです。
「まさか、本当に鬼が来るとは」
 おじいさんはびっくりしましたが、せっかく来たのを追い返すわけにもいかないので、おじいさんは、なけなしのお金でお酒を買って来ると鬼にふるまいました。
 すると鬼は、とても気分を良くして言いました。
「まさか節分の日に、こんなに良い思いが出来るとはな。
 この礼に、わしがサイコロに化けてやろう。
 じいさんは賭場(とば)へ行って、こっそりサイコロをすり替えるんじゃ。
 じいさんが勝つ様に、してやるからな」
 そこでおじいさんは言われた通りに鬼が化けたサイコロを持って、賭場へと出かけました。
 そしておじいさんが賭場で半に賭ければ、鬼のサイコロは奇数の目を出してくれるし、おじいさんが丁に賭ければ、鬼のサイコロは偶数の目を出してくれるのです。
 おかげでおじいさんは、一晩で大金持ちになりました。

 さて、大金持ちになって幸せに暮らしたおじいさんですが、やがて寿命を迎えて死んでしまいました。
 そして地獄行きか天国行きかを決める為にえんま大王に呼び出されたのですが、鬼のサイコロでインチキをした事がえんま大王にばれてしまい、おじいさんは地獄へ送られる事になったのです。
 地獄へ落とされてがっかりするおじいさんの前に、あの時の鬼が現れて言いました。
「じいさん、すまんかったな。
 本当なら天国行きなのに、わしがサイコロに化けた事がえんまさまにばれてしまって。
 でも、安心しろ。
 釜ゆでの時は火を加減して、ちょうどいい湯加減にしてやるからな。
 そして針の山を歩く時は、こっそりと鉄のわらじをはかせてやるからな」
 鬼のおかげで、おじいさんは釜ゆでにされても、針の山を歩かされても平気でした。
 そして、ちっとも苦しまないおじいさんに気がついたえんま大王は、
「うむ。釜ゆでにされても針の山を歩いても平気とは、何とも不思議な人間がいるものだ。
 しかし、地獄を苦しまない者が地獄にいては、他の罪人に示しがつかぬ。
 誰か、あのじいさんを極楽へ連れて行け」
と、鬼に命じて、おじいさんを天国へ追い出したそうです。
  おしまい