日本の民話 第67話 お銀と小金物語



(出典 i.ytimg.com)


むかしむかし、金沢(かなざわ)に、お銀(おぎん)と小金(こきん)という仲の良い姉妹がいました。
 でも、その姉妹は腹違いの姉妹で、それぞれに産んでくれたお母さんが違います。
 姉のお銀の母親はお銀が小さい頃に死んでしまい、妹の小金の母親はお銀の父親と結婚してから小金を生んだのです。
 そして新しい母親は自分が産んだ小金ばかり可愛がって、血のつながっていないお銀には冷たくあたります。
 母親は、お銀が不幸になっても、小金さえ幸せなら良いと思っていました。

 ある日の事、お銀の父親が仕事で江戸(えど→東京都)に行く事になりました。
 母親は良いチャンスだと思い、お銀を山へ連れて行って殺してやろうと思ったのです。
 そうとは知らない、お銀と小金は、
「わあ、きれいなお花だこと」
「こっちにも、きれいなお花が」
と、言いながら母親に連れられるまま、どんどんどんどんと山奥へ入って行きました。
 そして母親はお銀に気づかれない様に、小金だけを連れて家へ帰ってしまいました。
 お銀がふと気がつくと、小金も母親も見当たりません。
 悲しくなったお銀は、
「かあさま! 小金ちゃん!」
と、泣きながら、帰り道を探しました。
 そしてその日の夜遅く、お銀は泥だらけになりながらも家に帰って来ました。
 心配していた小金は、涙を流して喜び、
「よかったわ、よかったわ」
と、言いながら心の中で、
(ごめんね、お銀ちゃん。かあさまを許してやってね)
と、謝るのでした。
 ところが母親は、くやしそうな顔で、
「道に迷うなんて、馬鹿な子だよ」
と、言うと、また次の方法を考えていました。

 それから数日後のある日、母親はまたお銀を殺そうと、下男(げなん)に犀川(さいがわ)の岸辺に大きな穴を掘らせました。
 そして、嫌がるお銀を無理矢理引っ張って行って、その穴の中に突き落したのです。
「さあ、今度こそ、お前も終わりだよ!」
 母親はそう言うと、そのまま帰ってしまいました。
 すると、この様子を見ていた小金は、その穴に近づいて、
「お銀ちゃん! 大丈夫!」
と、呼びかけました。
 すると穴の中から、
「小金ちゃん助けて! 水が入ってくるの。どんどん深くなってくるの」
と、お銀の声がします。
 でも、子どもの小金には、どうする事も出来ません。
 やがて、お銀の声は全く聞こえなくなってしまいました。
「お銀ちゃん! お銀ちゃん! かあさまを許してあげてね。その代わりにわたしも、お銀ちゃんのそばへ行くから」
 小金はそう言うと、自分も深い穴の中に飛び込んでしまいました。

 今でも法年寺(ほうねんじ)には、この二人のお墓があるそうです。
   おしまい