日本の民話 第115話 真剣勝負



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 むかしむかし、ある剣術の道場で、二人の侍(さむらい)がけんかを始めました。
「さっきの勝負は、おれの勝ちだ!」
「いや、おれの勝ちだ。
 木刀(ぼくとう→木で作った刀)だからわからないだろうが、もし本物の刀なら、今頃お前は死んでいる」
「とんでもない。死んでいるのはそっちの方だ。おれの方が先に切ったはずだ」
「先に切ったのはおれだ! 木刀だから、わからなかっただけだ!」
「うそを言うな。お前なんぞに、おれが切れるものか」
「よし、そこまで言うなら、本物の刀で真剣勝負(しんけんしょうぶ)だ!」
「おう、望むところだ。きさまの体をぶった切ってやる!」
 道場にいたほかの侍が、あわてて止めに入りました。
「まあ、まあ、二人とも落ち着け。もし道場で刀を抜くと、破門(はもん)されるぞ」
 破門というのは、道場をやめさせられる事です。
 でも二人は、そんな言葉には耳を貸そうとしません。
「破門でもかまわん。こいつを切らんと、おれの気がすまんのだ。さあ抜け」
「ようし、覚悟(かくご)はいいな」
 二人は本物の刀を持ち出すと、お互いに構えました。
 するとそこへ知らせを聞いた道場の先生がかけつけて来ました。
「二人とも、止めんか!」
 先生が怒鳴っても、二人は止めようとしません。
 そこで先生は、二人の間に入って言いました。
「よろしい、それほど真剣勝負がしたいのなら、特別に許してやろう。
 お互いに、死ぬまで戦え。
 その代わりどっちが勝っても、勝った方にわたしが真剣勝負を申し込むからな!」
 それを聞いて、二人ともびっくりです。
 先生は有名な剣術使いで、万に一つも勝ち目はありません。
 すっかり怖くなった二人は、まっ青な顔で先生に謝ると真剣勝負を止めてしまいました。
   おしまい