日本の民話 第118話  赤児の授かり小判



(出典 www.jalan.net)


むかしむかし、ある山の地蔵堂(じぞうどう)の中で一晩を過ごした旅のお坊さんが、身仕度(みじたく)をしてお堂(どう)の外へ出ようとして何かに足をつまずきました。
「うん? なんじゃ?」
 お坊さんが落ちていた物を拾うと、それは小判が一枚入った財布(さいふ)で、財布の中には一枚の紙が入っています。
 その紙には、
《初息子(はつむすこ)に与える金》
と、書いてありました。
「なるほど。残念じゃが、これはわしがもらう物ではないな。ここに置いておこう」
 お坊さんが財布を元通りお堂の前に置くと、後から一人のおじいさんがやって来て、お堂の前の枯葉(かれは)と一緒に置いてある財布を背負ったカゴに入れて山を下りて行きました。
「おや、財布に気づかなかったな。・・・まあ、よいか」
 お坊さんはそのままふもとの村々を歩き、夕方になると一軒の家に宿を頼みました。
 そして宿を引き受けたその家の主人が、何と今朝の枯葉集めのおじいさんだったのです。
 ちょうどおじいさんの家では孫が産まれたので、おじいさんもおばあさんもニコニコしていました。
(あの小判は、このじいさまが地蔵堂の前をきれいにしてくれるので、その礼に神さまが授けたのだな)
 そう思ったお坊さんは、おじいさんに財布の事を話しました。
 そしておじいさんが拾い集めた落葉の中を探すと、やはりあの財布が出て来ました。
 でも、おじいさんは、
「ありがたい話しじゃが、これはお坊さまが先に見つけた物なので、おれの物ではありません。この財布は、お坊さまの物ですだ」
と、お坊さんに財布を差し出します。
 ですが、お坊さんは書いてある通り、
「これは今日生まれた男の子の物だ。わしがもらう物ではない」
と、おじいさんに納めさせました。

 次の朝、旅立つお坊さんにおばあさんが握り飯を持たせてくれました。
「どうぞ、昼に食べてください」
 実はその握り飯には、昨日の小判が入れてありました。
 お坊さんが峠(とうげ)を下りて行く途中、大きな荷物を背負っている若者に出会いました。
 話をすると、とてもお腹を空かせていたので、お坊さんはおばあさんからもらった握り飯を若者にあげました。
 若者はお坊さんに何度もお礼を言うと、峠をのぼって行きました。

 この若者、実はお坊さんが昨日世話になった家の息子、すなわち昨日産まれた赤ちゃんの父親だったのです。
 小判はやはり、初息子へとさずかったのです。
   おしまい