日本の民話 第257話 へびきり峠



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むかしむかし、広島の柏山(かしわやま)という山にはオスの大蛇が、そして山をこえた府中(ふちゅう)の亀ヶ岳(かめがだけ)にある七ッ池には、メスの大蛇が住んでいました。

 オスの大蛇は毎晩の様に長い重い体をずるずる引きずりながら、七ッ池まで出かけていきました。
 この二匹の大蛇は、恋人同士だったのです。
 でも、オスの大蛇が行き帰りに通る田畑や林の草木はそのためになぎ倒されて、途中の村人たちは困り果てていました。
 大蛇退治も考えましたが、とてもお百姓たちの手におえる相手ではありません。

 さて、この話を耳にした腕の立つ侍が、町からやってきました。
 そして峠をのぼってくるオスの大蛇を待ちぶせて、まっぷたつに斬り殺してしまったのです。
 けれど侍も力を使い果たして、そのまま息をひきとってしまいました。
 大蛇に苦しんでいた村人たちは侍の勇ましさをたたえて、これまで名前のなかった峠を『へびきり峠』と呼ぶ事にしました。
 ところが今度は、恋人を殺された七ッ池のメスの大蛇がだまってはいません。
 ふくしゅうに田畑を荒らしまわり、庭先のニワトリを食い殺し、人間の赤ん坊まで襲うようになってしまったのです。
 その話を聞いた青目寺(しょうもくじ)の目道(もくどう)という偉いお坊さんが、大蛇退治に出かけました。
 目道和尚は大きな法要(ほうよう)行う日の夜に、大蛇がお寺を襲いにくることを仏さまのお告げで知ると、若いお坊さんを一人、本堂の縁側に頭からふとんをかぶせて寝かせておきました。
 すると夜ふけにやってきた大蛇は、その若いお坊さんをひとのみにして、お寺の裏山へ姿を消していきました。

 さて次の日の朝、メスの大蛇は七ッ池のほとりで死んでいました。
 実は本堂の縁側でふとんをかぶって寝ていたのはわら人形で、目道和尚はその人形に毒を仕込んでおいたのです。
 こうして人々を困らせた二匹の大蛇は、みごと退治されたのでした。

 その後、へびきり峠の近くの村々では、わらで大蛇を作って大蛇退治を祝うお祭りをするようになったという事です。
    おしまい