日本の民話 第291話  お花とごんべえ



(出典 i.ytimg.com)


 むかしむかし、ある村にお花というキツネと、こんベえというタヌキが住んでいました。
 二匹とも、化けるのがとても
  ある日の事、お花とごんベえが、道でバッタリと出会いました。
 ごんべえは、わざとていねいに言いました。
「お花さんは化けるのがとても上手だそうだけど、おいらとどっちが上手か
「さあ? どっちが上手か、化け比べをしてみないとわかんないわ」
 それを聞いたとたん、ごんベえが腹を立てました。
「よし、そんならどっちが上手か、化け比べをしよう」
「いいわよ。明日の晩、お宮さんの境内(けいだい)へ来てちょうだい」
 お花はそれだけ言うと、帰っていき
(女のくせに、なんてなまいきなキツネだ。見ていろ。かならず負かしてやる。・・・だが、何に化けたらいいのだろう?)
 ごんべえは何に化けたらお花に勝つか、一生懸命に考えました。
 何しろお花の化ける花嫁姿は、ごんべえもほれぼれするぐらいきれいで、いつも人間の娘さんと間違えてしまいます。
 それに化けるのが上手なごんべえでも、男なので花嫁姿にだけは化けることが出来ません。
さて一方、キツネのお花はという
「ごんべえったら、どうせわたしに勝てっこないのに。まあいいわ。もう二度と化け比べをしようなんか、言い出せないようにしてやる」
と、言って、何度も何度も花嫁姿に化ける練習をし
  さて、いよいよ化け比べの夜になりました。
 お花はいつもの様に、花嫁姿に化けました。
 練習をしただけあって、本当に美しい花嫁姿
 そしてお花は本物の花嫁みたいにはずかしそうにうつむきながら、お宮さんへ行きま
  ところが鳥居(とりい)をくぐろうとして、ふと下を見ると、ホカホカとゆげのたっているまんじゅうが落ちているではありま
 お花は思わず、つばを
 あたりを見回しましたが、ごんべえはまだ来ていないようです。
(うふふ。今のうちだわ)
 お花は急いでまんじゅうを拾って、口の中へ入れようとしました。
 そのとたん、まんじゅうがパッとタヌキに変わったのです。
「あははははは。いくら美しい花嫁に化けても、やっぱり食いしん坊のキツネだなあ」
「!!!」
 恥ずかしくなったお花は花嫁姿に化けているのも忘れて、尻尾を出したまま逃げてしまいました。
   おしまい