日本の民話 第437話  だんだらぼっち



(出典 i.ytimg.com)


 むかしむかし、志摩半島(しまはんとう)おきの大王島(だいおうじま)に、だんだらぼっちという一つ目の大男が住んでいました。
 だんだらぼっちはものすごい力持ちで、漁師たちが魚を取ってくると、船ごと魚を持って帰ってしまうのです。
 だからだんだらぼっちが現れると、村中は大変なさわぎとなりました。
「だんだらぼっちだー! はやく逃げろー!」
 だんだらぼっちは村人の家をふみつぶしながら、食べ物を探して村中をあらしまわります。
 こまった村人たちは、村の代表の網元(あみもと)の家に集まって相談をしました。
「このままでは、村はほろんでしまうぞ。何か、良い方法はないだろうか?」
 網元が言うと、集まった村人の一人が言いました。
「それなら、大きな落とし穴を作ったらどうだ?」
「うーん、しかしだんだらぼっちが落ちる穴となると、そうとう大きな穴をほらなくてはならんぞ。それをほる人間や道具を集めるのは、とてもむりじゃ」
 すると、別の村人が言いました。
「そうだ、酒をたらふく飲ますんじゃ。いくらだんだらぼっちでも、酒に酔ってしまえばこっちのもんじゃ」
「しかし、だんだらぼっちは底なしじゃ。村中の酒を集めても、ほろ酔いになるのがいいところじゃ」
「うーん、落とし穴も酒もだめか。かといって、まともにたたかっても勝てる相手ではないし・・・」
 村人たちがなやんでいると、網元の子どもがやって来て言いました。
「お父ちゃん、おらにいい考えがあるよ」
「うん? 子どもが口をはさむ事ではないが。まあ、とにかく言ってみろ」
「あのね・・・」
 子どもは網元の耳に口をよせて、小声でひそひそと言いました。
「どう? いい考えだろう?」
「うーん、子どもの考えとしては、まあまあじゃな。とにかく、やってみるか」
 そんなわけで、村人たちはさっそく準備をはじめました。

 さて、それから何日かたって、だんだらぼっちが村にやって来ました。
「腹へったぞーっ、何か食い物を出せー! 出さねば、村中をふみつぶすぞー!」
 だんだらぼっちは村に入ると、とても大きなかごを見つけました。
「こりゃあ、なんだ?」
 すると、村人が答えます。
「これは考えるだけでもおそろしい、千人力の男が使うタバコ入れでごぜえます。
 千人力の男は、二、三日前に、この村にやって来ました。」
「千人力? そいつは、強いのか?」
「もちろんでございます。
 千人力の男は、あなたなどそばへも近寄れないほどの力持ちでございます」
 それを聞いて、だんだらぼっちはビックリです。
「そっ、そんなにすごいやつが、この村にいるのか?」
「はい、残念ながら、今は出かけておりますが」
「そっ、そうか」
 こわくなっただんだらぼっちがおそるおそる歩いて行くと、こませ袋という、太さが一かかえ半もある大きな魚のえさ袋がほしてありました。
「これは、なんじゃ?」
 それを聞いて、近くの村人が答えます。
「はい、これは考えるだけでもおそろしい、千人力の男がはく、ももひきでごぜえます。
 その男のでっかい事といったら、あなたさまがまるで子どもに思えるほどです」
「このおれが、子どもに思えるほどだと・・・」
 だんだらぼっちは、ますますこわくなってきました。
 そして今度は、大きなアミがほしてあるのが目に入りました。
「こっ、これは、なんじゃあ?」
「はい、これは考えるだけでもおそろしい、千人力の男が着る着物です。
 ですがこれでも短くて、足が半分ほど出てしまうのです」
「そっ、そんなにでっけえのかっ!」
「もちろんでございます。
 そうそう、千人力の男は、こんな事を言っておりました。
『お前たちは、小さすぎてつまらん。もっと大きいやつがいたら、マリのように放り投げて遊んでやる』と」
 だんだらぼっちは、ブルブルとふるえ出しました。
「もう、帰ろうかな」
 そしてふと、足元を見ました。
 するとだんだらぼっちと村人たちは、大きなむしろのような物の上に立っていたのです。
「こっ、これは、なんだ?」
 すると、網元が答えました。
「ごらんの通り、これはわらじでごぜえます」
「わわ、わ、ら、じ?」
「はい、考えるだけでもおそろしい、千人力の男がはくわらじでごぜえます。
 そう言えばそろそろ、ここへはきかえに来るとおもいますよ」
「なんじゃと! そんなやつにつかまったら大変じゃ!」
 だんだらぼっちは大あわてて逃げて行き、そして二度と村へはやって来なかったそうです。
   おしまい