国会・政治


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    れいわ新選組・代表の山本太郎氏(写真:アフロ

    「みなさん、僕は政治のことは何かわかりません。本当わかりませんけども。れいわ新選組素晴らしいのは、山本太郎さんは大衆の言葉を使って自分の言葉でしゃべりかけている唯一の政治家です。素晴らしい!」

    6月4日マイクを握りしめこう呼びかけたのは芸人のぜんじろう(54)。この日、東京・池袋でれいわ新選組街頭演説イベントが実施された。ぜんじろうは、次期参院選の比例代表に同党から出馬表明をした水道橋博士(59)の応援に駆けつけたのだ。

    ぜんじろうがひと通り演説を終えると、水道橋博士が「僕とぜんじろうはほぼ同期くらいの芸人なんですけれども」と切り出した。ぜんじろうや清水宏(56)、ラサール石井(66)らが所属する「日本スタンダップコメディ協会」でも活動している水道橋博士は、とあるイベント山本太郎代表(47)が見に来た際の出来事について話すことに。

    その時の様子について、山本氏は次のように回想し始めた。

    「僕、ドキドキしてたんですよ。呼ばれて『なにかひと言、冗談を言え』みたいなことを言われたら、雑誌とかに叩かれる恐れがあるじゃないですか、とんでもないこと言って。ずっと隠れていたんですけど、面白すぎて笑い声が響くんですよ、自分の」

    その上で、ぜんじろうに「あの時のネタ覚えてます? いいですか? お願いします! むちゃくちゃ面白いから!」と“フリ”を投げかけた。

    するとぜんじろうは、自信満々に次のような“ジョーク”を披露したのだ。

    「麻生大臣と安倍元首相と森喜朗が乗った飛行機が墜落しました。助かったのはだれか? 日本国民」

    このぜんじろうのパフォーマンスに、山本氏は左手の握りこぶしを頭上に掲げながら「フゥー! しびれるぅ~! 最高!!」と絶賛。観覧者たちからも歓声があがり、拍手がおくられた。また、水道橋博士は山本氏を指しながら、「あの時、お客さん50人だけど、1人だけ笑っていました」とコメントを添えた。

    ■止まらない皮肉…「なんぼ麻生太郎さんでも、死ぬのは1回ですからね」

    彼らの一連のやり取りを映した動画は、瞬く間にSNSで拡散された。しかし実在する人物の死を連想させるようなジョークに、「不謹慎」との批判が上がっている。

    《言っていい事と悪い事もあるんやで! 失礼過ぎる》
    《ちょっともひっかからない。完全に滑ってる。最悪最低。 テロ扇動にしか聞こえないことを街頭で演説したのか》
    《どんなに嫌いでも人の生死をネタにして、「ふぅーシビれるぅーサイコー!」って言える人間が政治家? 最低の人間だわ》

    このような出来事について、全国紙記者が言う。

    「昨年11月にも山本代表が特別国会の前に開いた記者会見で、麻生太郎氏(81)を『万死に値する』と強い言葉で批判しました。山本代表は“麻生氏が不況の原因を作った”と主張したかったようですが、反麻生派からも『言い過ぎ』との声が上がっていました。

    ぜんじろうさんは今回の応援演説で、山本代表の『万死に値する』発言にも触れています。加えて、『なんぼ麻生太郎さんでも、死ぬのは1回ですからね』『1回死ぬべき、と。そういうことなんですけど』と揶揄していました」

    「政治のことはわからない」としつつも、自らのスタイルであるスタンダップコメディについて「忖度なくマイク1本で自分の思ったことを言っていく芸」と語ったぜんじろう。さらに、「僕は社会風刺をやっている。社会的に強い人に対して何かを言っていく。弱い人は絶対揶揄しない」とも主張していた。果たして、その風刺は“正義”と言えるのだろうか。



    (出典 news.nicovideo.jp)


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    (写真:朝日新聞

    「狙いとしてはいろいろあるが、最も大きなものは、議会の機能不全を正すこと、これに尽きる

    こう語ったのは、広島県安芸高田市の石丸伸二市長(39)。これは、5月31日放送の『ABEMA Prime』(Abema TV)で語ったもの。

    今、石丸市長が全国的に注目を集めている。

    「石丸市長は安芸高田市の出身で06年に京都大学経済学部を卒業後、三菱UFJ銀行に入行し、アナリストとしてニューヨークでも活躍しました。20年7月に安芸高田市の前市長が河井克行元衆議院議員から現金60万円を受け取っていたことの責任を取り辞職したことで、出馬を決断し、銀行を退職。そして8月に行われた市長選で対立候補との一騎打ち制し、見事当選。

    就任早々にTwitterで《議会中、居眠りする議員が1名》と投稿し、話題に。昨年1月には転職サイトで全国から副市長を公募する異例の取り組みを行いましたが、市議会で財政難などを理由に否決され成立はしませんでした。その後も、性的マイノリティのカップルが婚姻と同等の扱いを受けられるパートナーシップ宣誓制度を導入するなど、先進的な政策を次々と進めています」(地方紙記者)

    そんな“政治の見える化”を掲げる石丸市長には、どうしても実現したい肝いりの政策が。市議会の議員定数半減だ。

    5月24日の会見で、石丸市長は現在16の安芸高田市の議員定数を8に半減する条例改正案の構想を明らかにしました。そして、『質問しない。居眠りする。説明責任を果たさない』と市議会を批判し、『そんな議員は要らないという声をたくさん聞く』とも語っていました」(前出・地方紙記者)

    “定数半減”という大鉈を振るう石丸市長だが、実現へのハードルはかなり高いようだ。

    「安芸高田市議会の宍戸邦夫議長は『半減すれば、市民の声が反映されなくなる』と猛反発しているといいます。石丸市長は10日の定例会で条例案を提案する意向のようですが、議会の大多数は反対する構えだといい、成立はかなり難しいでしょう」(前出・地方紙記者)

    議長のように定数削減に反対する声もあるいっぽう、石丸市長の改革を応援する声も。

    《人口27,000人で16の定数も必要ないと思います。市長が提案する半数の8に削減するべきだと思います。これは、この市だけでなく全国規模で行うべきだと思います》
    《がんばってください!!》

    また、安芸高田市での動きを受けて、中継でもたびたび居眠り姿が報じられる国会議員に対しては厳しい声が。

    国会議員にも言いたい言葉ですね。実際居眠りやヤジ飛ばすだけで年間数千万も使われるんだから要らないよね》
    国会議員も同じです 解雇したいです》
    居眠り議員要らない!!よく言った!!国会議員も同じだ!!》

    石丸市長は冒頭に続けてこう語っている。

    「議員定数を減らすだけで議会の機能不全が正せるとは思ってはいないし、急ぐ必要もないと思う。ただ、議会がやったことをそっくりそのまま反転させてみた時に、認められるのだろうかという問題提起をしたい」

    全国が注目する石丸市長の改革。果たして、実現するのかーー。



    (出典 news.nicovideo.jp)


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    ロシアプーチン大統領とはどんな人物なのか。軍事ジャーナリストの黒井文太郎さんは「21世紀最悪の大虐殺者となることは間違いない。すでに直接的には約7万人、間接的な殺人幇助も含めると30万人の犠牲者が出ている。そのなかにはロシアの民間人も含まれる」という――。

    ※本稿は、黒井文太郎『プーチンの正体』(宝島社新書)の一部を再編集したものです。

    ■万単位の規模で民間人が犠牲になったウクライナ

    ウクライナ侵攻では、開戦直後から激しい戦闘で凄まじい数の命が奪われた。

    2022年4月4日、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、それまでのウクライナの民間人の死者は少なくとも1430人。実際には、はるかに多いだろうと発表した。

    前日の4月3日には、ロシア軍が撤退したキーウ北方の街ブチャで多くの惨殺死体が発見されている。ブチャ市長はロイター通信に対し「300人以上が殺害された」と証言している。ブチャ以外でも同様の住民殺戮が行われたとの情報もあり、4月5日にはウクライナ当局が「キーウ周辺で410人の民間人遺体を発見」としている。

    他方、南部の港湾都市マリウポリはロシア軍に包囲され、連日砲撃を受けてきたが、市当局は3月28日に「死者は約5000人」と発表している。こうした数字がどれだけ正しいかは不明だが、少なくともウクライナで同時点で数千人の民間人が犠牲になっていたことは、間違いない。開戦2カ月後の4月下旬では、残念ながら万単位の死者数になっていると思われる。

    また、ロシア軍による犠牲者ということでは、民間人以外にウクライナ軍の犠牲者もいるが、こちらはウクライナ当局が厳重な情報秘匿を徹底しており、何人が死んだのか一切不明である。

    ■ロシア軍の戦死者も2万人に上ると推定される

    対するロシア軍の戦死者数も不明だが、3月21日ロシア紙サイトが「約9800人戦死」と報じ「すぐに削除」された。3月24日にはNATO当局者が「ロシア軍の戦死者が7000~1万5000人」としていた。

    また、4月21日にはロシアの親政府系メディア「レアドフカ」がロシア国防省のオフレコ会見の内容を誤ってネットに流出させてしまったのだが、それによると正確な数字は統計不可能ながら、わかっているだけでロシア軍の戦死者は1万3000人以上、行方不明者が約7000人とのこと。合わせて2万人近い死者ということになりそうだ。

    開戦から2カ月で凄まじい数の戦死者推定だが、ウクライナ軍もやはりかなりの戦死者が出ていることは疑いない。ロシア軍と同じくらいの戦死者が出ていてもおかしくはないのだ。

    以上はいずれも、プーチンがこの「恥ずべき侵略」を始めなければ、死なずに済んだ貴い命だ。つまり開戦2カ月ですでにプーチンは、おそらく3万人以上のウクライナ人を殺害したのだ。

    ■首相就任直後から10年間も無差別攻撃を続けた

    もっとも、プーチンがこれまでに「殺害してきた人々」はこれだけではない。主な殺人歴を以下に挙げる。

    ▽第二次チェチェン戦争

    プーチン1999年に首相に就任し、すぐにチェチェンへの侵攻を開始した。その攻撃は一般住民もろとも町村を無差別攻撃するもので、プーチンはそれを10年間も続けた。

    この第二次チェチェン戦争での民間人の死者数は、統計した団体ごとにさまざまな推定値がある。4万~5万人という推定が多いが、もっとも少ない推定値は中立的立場の国際人権団体「アムネスティインターナショナル」の調査で、民間人の死者が約2万5000人、さらにおそらく死亡したであろう行方不明者が5000人いるとされている。つまり、少なくとも3万人以上の民間人が殺害されたとみていいだろう。

    それに加え、チェチェン独立派の兵士も計1万数千人が戦死したとみられる。つまり、プーチンが命令した戦争により、少なくとも4万数千人以上が殺害されたのだ。

    ■国内外で暗殺されたプーチン批判派は100人超

    ▽モスクワ「自作自演」連続テロ

    KGBの後継組織である連邦保安庁(FSB)長官だったプーチン1999年8月9日に首相代行、同月16日に首相に任命されて実権を握るが、そのわずか半月後の8月31日モスクワ中心部のショッピングモールで爆弾テロが発生。さらに翌9月半ばにかけてモスクワの集合住宅ほかロシア各地で計5回のテロが起き、計295人が殺害された。

    のちに内外の勇敢な記者たちの調査により、これらのテロはチェチェン侵攻の口実とするためにプーチンがFSBに命じてやらせた可能性がきわめて高いとされている。つまり自作自演テロで、プーチンロシア人同胞を含む無関係の民間人295人を殺戮したと考えられるのだ。

    ▽反対派の暗殺

    プーチン政権発足以降、反対派の新興財閥(オリガルヒ)、政治家、記者らの殺害・殺害未遂および不審死があとを絶たない。こうしたプーチン批判派で、ロシア国内で殺害された人数は数十人になる。記者以外の人物、さらにロシア国外にいた人物の殺害まで含めると、おそらく100人を超える人数になるだろう。

    また、軍用神経剤「ノビチョク」で暗殺未遂に遭った民主化運動指導者のアレクセイ・ナワリヌイ(2020年)や元情報機関員セルゲイ・スクリパリ(2018年)のように、殺害されないまでも暗殺未遂に遭った人数を含めると、その数はさらに何倍にも膨れ上がるだろう。

    ■ウクライナ侵攻後も続けているシリアへの無差別空爆

    ▽シリア空爆

    2011年3月に始まったシリア紛争で、プーチン政権は反独裁を叫ぶシリア国民を殺戮するアサド政権に圧力をかける国連安保理決議をことごとく拒否権で潰し、アサド政権への軍事支援を続けた。

    また、2015年9月からは直接ロシア軍を派遣し、反体制派エリアへの無差別空爆を開始した。ロシア軍は病院、学校、市場、民家を破壊し、民間人多数を殺害し続けた。「ダブルタップ攻撃」といって、同一の地点を時間差で攻撃することにより、1発目の攻撃での被害者を救助するために集まった人々をさらに殺害するということまでやっている。

    シリアでのそうした攻撃はウクライナ侵攻後も変わらず続けているが、ロシアは一貫して「テロリストのみ攻撃している」と主張している。ウクライナでやっていることと同じだ。

    ■間接的な殺人幇助で20万人以上の民間人が犠牲に

    ロシア軍シリアで殺戮した民間人の人数は、NGOシリア人権監視団」(SOHR)によれば少なくとも8700人(2021年6月時点)、NGO「暴力記録センター」(VDC)によれば6900人(2022年2月時点)とのことである。

    ちなみにVDCは戦闘員を含めたロシア軍による殺害総数を7360人と統計している。「テロリストのみ攻撃している」と言いながら、実際には民間人ばかり殺害していることになる。

    それだけではない。プーチンはこうした直接的な殺人だけでなく、間接的な殺人幇助も行っている。前述したようにロシアが国連安保理決議を葬ったことにより、アサド政権は延命し、多くの民間人を虐殺した。その人数は前出SOHRによれば判明しているだけで13万人以上、不明者はさらに数万人規模という。もう一つの有力なNGOシリア人権ネットワーク」(SNHR)の統計では、20万人以上に及ぶ。

    この膨大な数の民間人犠牲者も、プーチンが殺したといって過言ではない(さらに反体制派兵士も8万人以上を殺害している)。

    ■ロシア軍の代わりに紛争国で殺戮を行う民間軍事会社

    ▽GRU指揮下の民間軍事会社「ワグナー」の暗躍

    ロシア軍情報機関GRUが、ロシア軍が表立って行動できないときに、軍のダミーとして使っている民間軍事会社が「ワグナーグループ」だ。所有者はプーチン側近の政商でクレムリンと直結している。

    このワグナーシリアウクライナだけでなく、リビア中央アフリカ南スーダンモザンビークマダガスカル、マリなどに派遣されている。ワグナーは汚れ仕事を請け負うことが多く、それらの国でも独裁的な権力者もしくはいずれかの政治勢力の側に参加し、現地の反対派を弾圧する任務に就くことが一般的だ。その過程でおそらくそれなりの人数の現地住民を殺戮しているが、その活動は秘匿されている。

    2022年4月5日、国際人権団体「ヒューマンライツウォッチ」が「マリで3月末に約300の民間人が、マリ政府軍と外国人戦闘員に殺害された」との報告書を発表した。この外国人ロシア人だったとの目撃証言があり、おそらくワグナーと思われる。

    ■ウクライナ東部では侵攻前にすでに1万人が死亡

    ▽ドンバス地方侵略

    ロシア軍によるウクライナへの不法な侵略行為は、2014年から継続している。最初はクリミア半島に軍を派遣して占領したが、その後ロシア一方的に併合したと主張している。

    さらに、その勢いでウクライナ東部のドンバス地方に非公式に軍および軍情報機関を投入し、地元の親ロシア派を前面に立てて一部を占領した。その後のウクライナ軍との戦いの過程で2022年1月までにすでに約1万4000人が死亡している。これらの犠牲もすべてプーチンに責任がある。

    以上のように、2022年2月に開始されたウクライナ侵攻よりずっと以前から、プーチンは数々の殺戮に手を染めてきた。ざっと計算すると、すでに推定で7万人近い殺戮に直接の責任がある。プーチンの事実上の配下のようになっているシリアのアサド大統領による殺戮の責任も加えれば、プーチンはなんと30万人をはるかに超える人々を殺してきた21世紀最悪の大虐殺者といえる。

    プーチン1999年以来、殺戮を続けている。ウクライナ侵攻以前に、すでにヒトラースターリン毛沢東、ポル・ポトといったカテゴリーの人間だったのである。

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    黒井 文太郎(くろい・ぶんたろう)
    軍事ジャーナリスト
    1963年生まれ。横浜市立大学卒業。週刊誌編集者、フォトジャーナリスト(紛争地域専門)、『軍事研究』特約記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長などを経て、軍事ジャーナリスト。専門は各国情報機関の最新動向、国際テロ(特にイスラム過激派)、日本の防衛・安全保障、中東情勢、北朝鮮情勢、その他の国際紛争、旧軍特務機関など。著書に『イスラム国の正体』(KKベストセラーズ)、『イスラムのテロリスト』『日本の情報機関』(以上、講談社)、『インテリジェンスの極意!』(宝島社)、『本当はすごかった大日本帝国の諜報機関』(扶桑社)他多数。近著に『プーチンの正体』(宝島社新書)がある。

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    モスクワ郊外ノボオガリョボの大統領公邸でテレビ会議を行うロシアのプーチン大統領=2022年5月20日 - 写真=EPA/時事通信フォト


    (出典 news.nicovideo.jp)


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    ロシアウクライナの戦争はどうすれば終わるのか。慶應義塾大学の前野隆司教授は「『プーチンはひどい』『ロシア理解できない』と突き放してしまうと、問題は解決できない。問題解決のためには、相手の立場について考え、対話を重ねるしかない」という――。

    ※本稿は、前野隆司『ディストピア禍の新・幸福論』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

    ■人類は理想の平和に向かって歩む、と思っていたが

    1962年に生まれたわたしは、若い頃、「第二次世界大戦後に生まれて本当によかった」と思っていたことを覚えている。戦争のないバラ色の世界。1975年にはベトナム戦争が終結し、1989年にはベルリンの壁が崩壊した。

    「ついに人類は理想の平和へ向かって歩んでいる」。そんな希望があった。

    もちろん、その後も悲惨な紛争や内戦はいくつも起きていたが、少なくとも第三次世界大戦が起こることを想像する機運はなかった。

    だが、去る2017年民主主義国家アメリカで、民主主義を破壊するような言動を繰り返すトランプ大統領が誕生したことはショッキングだった。

    多くの惨禍を経験した人類はもはや愚かではなく、少なくとも民主主義の強国において扇動的な指導者が代表に選ばれることなどあり得ないと思っていたら、いとも簡単にかつ民主的に選ばれてしまったのだ。

    この暴君が選ばれる過程を見ていると、アドルフ・ヒトラーが首相に選ばれた過ちが実は現代の世界でも簡単に再現できることに対し、恐怖を感じたものだ。

    ■アメリカも中国もどこへ向かうのか

    トランプ2020年大統領選に敗北し、わたしもひとまず胸を撫(な)で下ろした。だが、落選後にも暴論を繰り返し、それによって支持者の議事堂襲撃という民主主義の根幹を揺るがす事態を引き起こしたのには、閉口するばかりである。

    また、国内総生産世界第2位の中国が、共産主義国家なのか、専制政治なのか、独裁政治なのかは、今後も注視していく必要がある。

    少なくとも現時点で、企業活動に国家が介入したり、個人の権利を制限したり、ウイグル自治区で悲惨な人権侵害を行っていたり、周辺の各国と領土紛争を引き起こしているなど、「人民が共に和する国」とは言い難い。

    着々と軍備を拡張しつつある中国の国内総生産が10年以内に世界一になるという予測を見ると、新冷戦構造がどこに向かうのかは予断を許さない。

    ■人類はいまも愚かで、まったく進歩していなかった

    そして、ロシアウクライナに侵攻した。「プーチンはひどい」というのは簡単だが、彼個人の問題ではない。かつてスペインイギリスドイツも日本も行った侵略が、過去のものではないことを思い知らされたのが現代である。時計は思いのほか簡単に巻き戻された。

    世界大戦は、過去ではなく、未来かもしれないのだ。

    日本にも、諸国との紛争の種がある。仮に戦争にまで発展すると、多くの犠牲者が出ることになるだろう。そう、はじまりは簡単なのだ。台湾海峡、南シナ海、尖閣諸島、竹島領海周辺、あるいはそのほかの紛争地域で偶発的に衝突が起きることも十分に考えられる。

    子どもの頃のわたしには想像できなかったような、戦争の危機を身近に感じられる時代がやってきたのだ。

    ロシアによるウクライナ侵攻が起こり、中国をはじめ専制主義が世界中で拡大し、欧米などの民主主義国でも暴動や激しいデモが頻発し、人々の心は荒(すさ)んでいる。

    世界が分断されるなか、日本は“とりあえずの安心安全”のためにアメリカに追従するしか当面の選択肢はないように思える。

    わたしはそんないまの世界の状態を見ていると、絶望感を抱かざるを得ない。ほんの30年前、冷戦終結時には想像もできなかった、生きているのが悲しくなるような時代――。

    人類はいまも愚かだった。実はなにも進歩していなかったのだ。

    ■現在の世界は両極化する「ディストピア禍」

    一方、現代社会はかつてないほどつながっている。

    現代とは、テクノロジーの発展によってほぼすべての国と地域がグローバルにつながり、経済的にも文化的にも互いに影響を与え合う社会である。だから大戦は起きないという人もいる。

    しかし、人類は本当に賢いのだろうか。

    自国中心主義・自分中心主義に陥ったアメリカ大統領を支持したアメリカ人が何千万人もいたことを思い出すと、人類はそんなに賢くないと考えるほうが賢明であろう。

    世界中の人たちがつながり、より良い平和な世界を求める活動や言論が、施政者も無視できない力を持ちはじめたことも事実だが、それを阻止しようとする勢力が巨大化していることもまた事実だ。

    つまり、世界は両極化しつつある。

    中心が希薄化したから、バラバラカオスになりつつある。

    これまで中心にあった価値観民主主義資本主義、成長主義、個人主義など)に綻(ほころ)びが生じたから、両極から引き裂かれそうになっているディストピア禍なのである。

    ■現代に必要なのは、他者を想像する力

    ディストピア禍において、つながりや利他の精神を築き、より調和的な世界を目指すためには、まず「他者を想像すること」が極めて重要なアプローチとなる。

    他者の立場やその苦しみ、痛み、喜びを想像し、自分たちとは異なっていてもそれを尊重すること。そんな人間本来が持つ「想像力」こそが、いま求められる力なのではないだろうか。

    ■「日本人や中国人のことは理解できない」

    かつて、あるアメリカ人の大学教授と話していて、わたしは大きな違和感を覚えたことがあった。

    彼が「日本人中国人のことは理解できない。それは仕方ないことだ」といったのだ。わたし自身の感覚では、中国人の気持ちも(日本人の気持ちほどではないとしても)理解できるし、興味や関心を持って学んでいるから、異なる文化圏に生きるアメリカ人の気持ちもわかる。

    しかし彼は、(知識人であるにもかかわらず)はっきりと「あなたたちのことはわからない」と述べたのだった。

    わたしはこのとき、彼がなぜ他者を「わかろうとしない」のかが理解できず、とても不満に思ったのを覚えている。

    似たような話はほかにもある。

    イスラム過激派組織ISILのジハード(自爆テロ)の話をすると、多くの欧米諸国人は「わけがわからない!」「理解できない!」と吐き捨てる。

    そんなあり方は、相手の立場や主張を想像することを安易に放棄し過ぎていないだろうか?

    もちろん、わたしも自爆テロのような殺戮(さつりく)が「正しい行い」だとは思わないし、殺戮はなくなるべきだと考えている。だが、相手に対して冷静に敬意を表し、状況の意味を理解してから意見を述べるべきだと主張したい。

    イスラム教の聖典には、「アッラーのために殉死した者は天国へ行ける」と書かれている。

    キリスト教十字軍などの迫害を受け続けた歴史を持つイスラム教徒(イスラム教原理主義者)の一部が、アッラーの教えを心から信じた結果、命を賭して戦おうと決断する論理は理解できないだろうか。

    憎き異教徒に復讐(ふくしゅう)し、聖典に書かれていた通り、英雄となって天国に行きたいと思う人々のことを想像できないだろうか。

    ■対話ではなく、対立が深まっているワケ

    それぞれの主張を肯定し、共感しようといっているのではない。

    逆の立場でもいえることだが、相手の立場について考える想像力と理解力を持つべきだといっているのだ。

    他者のことを「想像もできない」のは、あまりに相手の立場を顧みない、人と人とを分断へ導く思考ではないだろうか? そこに問題があると、わたしは思うのだ。

    日本人もこうした態度を取る人は少なくない。世の中を見渡せば、ネット上の中傷行為や学校でのいじめ、職場でのハラスメントなど、相手の人格を尊重しない言動が溢(あふ)れている。隣国との歴史問題も、対話が進まず悪化が止まらない状態である。

    「あの国は理解できない」「あの国は世界の常識が通用しない」といって呆(あき)れ返る自国中心主義的な態度は、文化相対主義(※)から見ると、想像力に欠けている。

    そうではなく、互いの立場を想像したうえで、「なるほど、立場が違うから意見も変わるのだ。ならばどうすれば距離を縮められるのか」と考えてみようではないか。

    ※諸文化をそれぞれ独自の価値体系を有する、対等な存在として捉える態度、考え方。各文化は個々の自然・社会環境への適応を通じてかたちづくられたもので、それ自身の価値を有し、互いに優劣や善悪の関係にないとする。文化の多様性を容認して異文化間の相互理解を促し、人類学の基本倫理となってきた

    ■「許し、信じ、対話する」以外に手段はない

    そのためには、相手のことをきちんと想像し、互いに過去を「許し合う」ことがポイントになる。昨日の殺戮を許そうといっているのではない。過去の遺恨を手放すべきである。

    要するに、「目には目を、歯には歯を」という「復讐の本能」を理性で抑えるべきなのである。しかも、無理やり押さえ込むのではなく、「自然に」である。「憎い相手を許すなんて難しい」という気持ちも理解できなくはない。しかし、復讐の連鎖は誰も幸せにしないではないか。

    キリスト教は愛の宗教といわれている。新約聖書には「右の頬を打たれたら左の頬も差し出せ」と記されている。簡単にいえば、「敵であっても許しなさい」と書かれているのである。キリスト教徒も、そうでない人も、その原点に戻るべきだ。

    そうして相手を想像し、許したあとは「対話」することだ。相手のことを信じて、好奇心を持って対話する。

    身近な例を挙げるなら、2022年現在、日韓関係は戦後最悪の状態といわれる。この問題もお互いを許すべきだ。必要なら謝るべきだ。どちらかに100パーセント非があると考えるのではなく、お互いの行き過ぎや言い過ぎを反省し合い、許し合うべきだ。

    韓国のカルチャーが好きな日本人は、韓国について好奇心を持って理解できるだろうし、ねじれた歴史問題も、相手を信じて時間をかけて対話すれば解決に向かうだろう。

    逆に、日本に関心を持つ韓国人日本人と接してはじめて、自国の反日教育はやり過ぎだと気づいたという話は少なくない。

    この問題は簡単ではないが、あきらめないことだ。許し、信じ、対話することからすべてははじまるのである。

    カオス化する世界のなかで、多様な価値観を持つ人々がつながり合うためには、許し、信じ、対話することからはじめる以外に解決策はない。

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    前野 隆司(まえの・たかし
    慶應義塾大学大学院システムデザインマネジメント研究科教授
    1962年山口県生まれ。84年東京工業大学工学部機械工学科卒業、86年東京工業大学理工学研究科機械工学専攻修士課程修了、同年キヤノン株式会社入社。慶應義塾大学工学部教授、ハーバード大学客員教授等などを経て、2008年慶應義塾大学大学院システムデザインマネジメント(SDM)研究科教授。11年同研究科委員長兼任。17年より慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長兼任。研究領域は、ヒューマンロボットインタラクション、認知心理学脳科学、など。『脳はなぜ「心」を作ったのか』『錯覚する脳』(ともに、ちくま文庫)、『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』(講談社現代新書)など著書多数。

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    ウクライナのホストメルにあるアントノフ空港で清掃作業が続くなか、航空機格納庫にいたウクライナ兵=2022年5月5日 - 写真=AA/時事通信フォト


    (出典 news.nicovideo.jp)


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