妖怪・怪談


    怪談怖い昔話 第168話 人の精気を吸うがま



    (出典 livedoor.blogimg.jp)


     むかしむかし、あるところに、古い家に住んでいる老人がいました。
     べつになにが原因とわからないままに元気がなくなり、どんどんやせていきます。
     そこで医者にもみてもらい、高い薬も飲んでみましたが、いっこうによくならず、ついには寝こんでしまったのです。
     ある日、ひさしぶりのよい天気なので、床(とこ→この場合はふとん)を出て縁側(えんがわ)に腰をかけ、ボンヤリと庭をながめていました。
     すると、近くの木の枝にとまっていたスズメが、きゅうにそばへ飛んできたかと思うと、縁の下に飛びこみました。
    「はて、なにを見つけたのかな?」
    と、ふしぎに思い、縁の下をのぞきこんでみましたが、どこへ消えたのか、それっきりスズメは出てきません。
     そこへノラ猫がやってきて、庭石にのぼり、毛づくろいを始めました。
     ところが、ネコはふいにころがりだし、そのままなにかに引きずられるように、こっちへ近づいてきたかと思うと、やはり縁の下に消えました。
     そればかりではありません。
     目の前の木をはっていた毛虫が、とつぜん下へ落ち、地面を引きずられるようにして縁の下へ消えたのです。
    「いったい、どうしたというのだ?」
     老人は、だんだん気味が悪くなり、ふたたび床へ入って横になりましたが、どうしても胸のドキドキがおさまりません。
     そこで手伝いの男を呼んで、縁の下を調べてくれるようにたのみました。
     男が縁側の板をはずし、下へもぐりこむと、縁の下には大きなガマガエルがいて、男を見るなり、フッと息を吹きかけたのです。
     とたんに胸が苦しくなり、男はもう少しでたおれそうになりました。
    「だ、だれか!」
     男の叫び声を聞いて、老人が起きてかけつけると、男が青くなって縁の下からとびだしてきました。
    「どうした?」
    「ガ、ガ、ガマ、・・ガマが」
     いったきり、男が気を失いました。
     老人はビックリして、近所の人たちを呼んできました。
    「かまわないから、その縁側をこわして、下を見てくれ」
    と、いうので、近所の人が、つぎつぎと縁側の板をめくると、どうでしょう。
     大きな海ガメほどもあるガマが、ゆっくりとはいだしてきたのです。
     ガマは老人をジロリとながめ、そのまま庭を横ぎり、うらの竹やぶに消えました。
     その無気味な姿に、だれも声がでません。
     しばらくしてハッと気がつき、縁の下を調べてみると、食べ残したネコの骨やらスズメの羽がちらばっていました。
    「さては、いままでのふしぎな出来事は、すべてガマのしわざであったか。・・・もしかして、自分の病気もガマのせいでは」
    と、思い、物知りにたずねてみると、
    「ガマは、ときに妖怪となって、人間の精気(せいき→元気)まで吸う。病気になっても不思議ではない。ガマがいなくなったのだ、病気もなおるだろう」
    と、教えてくれました。
    「やれやれ、あぶないところであった」
     老人は、ホッとして胸をなでおろしました。
     物知りのいうように、老人の病気はうそみたいによくなり、やがて、もとの元気なからだになったといいます。
       おしまい







    怪談怖い昔話 第167話 大ムカデの妖怪



    (出典 truth.bahamut.com.tw)


     むかしむかし、ある山の中に大ムカデの妖怪(ようかい)が住んでいました。
     どんな姿をしているのか、見た者はいませんでしたが、毎年、秋の名月(めいげつ)が近づくころになると、近くの村の娘のいる家の屋根に、白羽(しらは)の矢がうちこまれるのです。
     すると、その家では名月の夜に、娘を棺おけ(かんおけ)に入れて、山のふもとまで運んでいき、そこへおいてこなくてはなりません。
     もし娘をつれていかなかったら、村の田んぼや畑はメチャメチャにされてしまうのです。
     だから、村人たちは泣く泣く、この恐ろしいならわしにしたがっていました。
     ある年、石黒伝右衛門(いしぐろでんえもん)という武士の家の屋根に、白羽の矢がたちました。
     伝右衛門(でんえもん)には、十六歳になる美しい娘がいて、まるで宝物のようにかわいがっていました。
     その娘を大ムカデの人身御供(ひとみごくう→生きた人間を神さまへのそなえものにすること)に出せというのです。
    (どんなことがあっても、大切な娘を渡すものか)
     しかし、娘を出さなくては、村人たちがひどいめにあわされます。
     いかに武士といっても、村の習わしを破ることはできません。
    (よし、わしが妖怪を退治してやる)
     伝右衛門は覚悟をきめ、名月の夜を待ちました。
     さてその夜、伝右衛門は娘を家の蔵(くら)にかくし、みずからが娘に変装(へんそう)して、息のできるように穴のあけられた棺おけの中へもぐりこみました。
     なにも知らない村人たちは、
    「あんなかわいい娘さんが、大ムカデの人身御供になるなんて」
    と、いいながら、伝右衛門の入った棺おけをかついで、山のふもとまで運びました。
     ひとりになった伝右衛門は、しっかりと刀をにぎりしめ、棺おけの穴から外の様子をうかがっていました。
     月の光が明るく、草の葉がそよそよと風にゆれています。
     やがて夜もふけたころ、風がはげしくなり、草の葉が大きくうねりだしました。
    と、ふいに、青白い光が流れ、目をランランと光らせた大ムカデが現れました。
     何百本とある足が草をなぎたおし、棺おけの方へ近づいてきます。
     その恐ろしい姿は、いかに武士の伝右衛門でも、思わず息をのむほどです。
     大ムカデは長いからだで、棺おけをとりかこむと、頭で棺おけをひっくり返しました。
     伝右衛門はクルリと一回転して外へとびだすと、すばやく刀をぬきます。
     大ムカデの動きがいっしゅん止まりましたが、すぐに頭をふりあげると、伝右衛門にかみつこうとしました。
     女の着物を脱ぎすてた伝右衛門は、大ムカデの首をめがけて刀をつきさします。
     大ムカデは頭を大きくうしろへのけぞらせて、その刀をよけました。
     伝右衛門は、すばやく刀を横にはらって、大ムカデのキバを切り落とすと、おおいかぶさってくる大ムカデのからだを、切って切って切りまくりました。
     さすがの大ムカデも、これにはたまらず、ついにガクッと頭をおとし、それっきり動かなくなりました。
     伝右衛門は大ムカデの死を確かめると、おおいそぎで自分の家へもどって行きました。
     話を聞いておどろいた村人たちが、山のふもとへかけつけると、大ムカデの姿はなく、黒ぐろとした血のあとが山の方まで続いていました。
    「ほんとうに死んでしまったのだろうか。もし生きていたら、どんなことをされるかわかったものでない」
     村人たちはビクビクしながら、次の年の秋を待ちましたが、名月が近づいても、娘のいる家に白羽の矢はたたず、田んぼや畑も無事でした。
     村人たちは大いに喜び、伝右衛門の勇気をあらためてほめたたえたといいます。
       おしまい







    怪談怖い昔話 第166話 なぞなぞばけもの



    (出典 s2-ssl.dmcdn.net)


     むかし、たびの坊さんが、山のふもとの村にやってきました。
     日がくれたので、
    「どうか、こんやひとばん、とめてくださらんか?」
    と、たのんでまわりましたが、どこの家もとめてくれません。
     お寺はないかときくと、
    「あるにはあるが、夜になると、なぞなぞをかけるばけものがあらわれ、なぞがとけんと、いのちをとられてしまう。いままで、なん人の和尚(おしょう→詳細)がころされたかわからん」
     ところが、たびの坊さんは、
    「わしは、なぞなぞが大すきなのじゃ。ばけもののなぞなぞをといて、しょうたいをみやぶってやろう」
    と、村のうら山にある、あれはてた、オンボロ寺へむかいました。
     さて、そのばん。
     坊さんが、お経をとなえていると、なまぐさい風がふいてきて、やぶれしょうじのそとに、顔の長いばけもののかげがうつりました。
     そして、こういったのです。
    「木へんに春の、ていてい小法師(こぼうし)はおるか?」
    「そんなものは、おらん。おまえは、だれじゃ?」
    「トウヤのバズ。わしのしょうたいをあててみい」
    「かんたん、かんたん。トウヤは、東の野原、バズは、ウマの頭。つまり、東野の馬頭。おまえは東の野原でしんだ、馬の頭のばけものだろう。こわくないぞ。ひっこめ!」
     坊さんにいいあてられたばけものは、
    「ヒェーン!」
    と、にげかえっていきました。
     しばらくすると、また、なまぐさい風がふいてきて、やぶれしょうじのそとに、りっぱなひげをはやした、ばけもののかげがうつりました。
     そしてまた、
    「木へんに春の、ていてい小法師はおるか?」
    「そんなものは、おらん。おまえは、だれじゃ?」
    「ナンチのダイリ。わしのしょうたいをあててみい」
    「かんたん、かんたん。ナンチは南の池、ダイリは大きな鯉。つまり、南池の大鯉。おまえは南の池でしんだ、大鯉のばけものだろう。こわくないぞ。ひっこめ!」
     坊さんにいいあてられたばけものは、
    「ヒェーン!」
    と、にげかえっていきました。
     しばらくすると、またまた、なまぐさい風がふいてきて、
     やぶれしょうじのそとに、とさかのある、ばけものがうつりました。
    「木へんに春の、ていてい小法師はおるか?」
    「そんなものは、おらん。おまえは、だれじゃ?」
    「サイチクリンのヘンソクケイ。わしのしょうたいをあててみい」
     こんどはちょっと、むずかしいなぞなぞでしたが、坊さんはあわてません。
    「サイチクリンは西の竹の林、ヘンソクとは一本足、ケイは鶏(ニワトリ)。つまり、西竹林の片足鶏。おまえは西の竹やぶでしんだ、一本足のニワトリのばけものだろう。こわくないぞ。ひっこめ!」
     坊さんにいいあてられたばけものは、
    「ヒェーン!」
    と、にげかえっていきました。
     しばらくすると、またまた、なまぐさい風がふいてきて、
     やぶれしょうじのそとに、りっぱなツノをはやした、ばけもののかげがうつりました。
    「木へんに春の、ていてい小法師はおるか?」
    「そんなものは、おらん。おまえは、だれじゃ?」
    「ホクソウレイバのロウギュウズ。わしのしょうたいをあててみい」
    「なんだ、つまらん。ホクソウレイバとは、北の葬礼場(そうれいば→おはか)。ロウギュウズは、年をとってしんだ、ウシの頭のばけもの。つまり北葬礼場の老牛頭。おまえは北の葬礼場でしんだ、年寄りの牛の頭のばけものだろう。こわくないぞ。ひっこめ!」
     坊さんに、あてられたばけものは、
    「ヒェーン!」
    と、にげかえっていきました。
    「これで、東西南北のばけものがでつくしたから、ねるとするか」
     坊さんが、ひじまくらでゴロリとよこになると、こんどはゆかしたから、なまぐさい風がふいてきて、
    「やい、ぼうず。よくも、わしらばけものなかまのしょうたいをみやぶって、おいかえしたな!」
     頭の大きなばけものが、あらわれでました。
    「おまえは、だれじゃ?」
    「木へんに春のていてい小法師とは、わしのこと。しょうたいをあててみい」
    「かんたん、かんたん。木へんに春とかけば、『椿(つばき)』。ていてい小法師とは、わらをたたく木づちのべつ名。つまり、椿の木でつくられた、木づちのばけものだろう。えーい、こわくないぞ。ひっこめ!」
     坊さんにいいあてられたばけものは、これまた、
    「ヒェーン!」
    と、にげかえっていきました。
     それっきり、ばけものはあらわれません。
     坊さんは朝まで、グッスリとねむりました。
     一夜あけて、坊さんがかねをつくと、村の人たちがおそるおそる集まってきました。
    「ようこそ、こぶじでしたなあ。ばけものたちがあらわれでたでしょう」
    「でたとも。東の野原でしんだウマの頭や、南の池でしんだ鯉や、西の竹やぶでしんだ一本足のニワトリや、北のおはかのそばでしんだウシの頭のばけものが、この寺のゆかしたにすむ、椿の木づちにあいにきたところを、すべて、しょうたいをみやぶって、おいかえした。さあ、それらをのこらずひろいあつめて、ねんごろにとむらってやるとしよう」
     坊さんは、そういって、ゆか板をはがしとりました。
     すると、このお寺をつくるときにつかわれたきり、ゆかしたにおきわすれられていた、椿の木でできた木づちがでてきました。
     人につかわれていたどうぐは、わすれさられたままだと、ばけものになることがあるのです。
     だれにもとむらわれることなく、しんだままのウシやウマや魚やニワトリもおなじです。
     坊さんは、ばけものになったそれらのほねをひろいあつめると、木づちとともにくようしてやり、村の人たちのたのみをうけて、オンボロ寺の和尚さんになることをひきうけたそうです。
           おしまい







    怪談怖い昔話 第165話 二つ目のおばけ



    (出典 blog-imgs-70.fc2.com)


    一つ目小僧

    (出典 Youtube)


    むかしむかし、江戸の浅草(あさくさ)で、見世物小屋(みせものごや)をだしていた、伝七(でんしち)という男がいました。
     あれやこれやと、いろいろやってみましたが、どうもお客が集まってきません。
    「なにかうまい、だしものはないものか」
    と、考えていたところ、北の国には一つ目(→詳細)小僧がいるときいて、とびあがってよろこびました。
    「こいつは、二、三人、さらってきて、大もうけをしよう」
     そこで、とるものもとりあえず、北の国へ旅にでかけました。
     山をこえ、野をこえ、北へ北へと、いく日もいく日も歩いていくと、どうしたものか、暗い森の中にまよいこんでしまいました。
     もう、日もくれかかっています。
    「さあ、えらいこっちゃ。こんなところで野宿とは」
     すると、どこからか歌が聞こえてきました。
     耳をすませてみると、子どもの声です。
    「どこで歌っているのかな?」
     クマざさをおしわけ、声をたどっていくと、いました。
     子どもが五、六人、わになって遊んでいます。
     その子どもたちは、どれもこれも一つ目です。
    (さては、ここが一つ目の国か。よーし、あの子どもをさらっていって、見世物にしてやろう)
     伝七(でんしち)は、そーっと近づいていって、両手でグイと、ひっつかまえました。
     とたんに、
    「えーい、なにをする!」
     伝七(でんしち)は、けとばされ、地面にたたきつけられてしまいました。
     ヒョイと顔をあげてみると、おとなの一つ目に、グルリとまわりをとりかこまれています。
     伝七はおとなの一つ目に、なわでぐるぐるまきにしばられて、
    「わっしょ」
    「わっしょ」
    と、一つ目の村へかつがれていきました。
     さて、それからまもなくのこと。
    「さあ、いらっしゃい。いらっしゃい。世にもめずらしい二つ目のおばけだよ。このおばけ、なんと目が二つもあるんだ」
     とうとう、伝七は一つ目の国で、見世物にされてしまったのです。
         おしまい







    怪談怖い昔話 第164話 約束の日



    (出典 iki-toki.jp)


    むかし、江戸の本所(ほんじょ)の、いろは長屋のおくに、山口浪之介(やまぐちなみのすけ)と光川新衛門(みつかわしんえもん)という浪人(ろうにん→詳細)が、いっしょにくらしていました。
     このふたりは小さいときからの友だちで、ずっとおなじ殿さまにつかえていましたが、殿さまの家がつぶれて以来、ながい浪人ぐらしで、いまではその日の米代にもこまるありさまです。
    「のう、浪之介(なみのすけ)。こんなことをしておっては、ふたりとものたれ死にをするばかりだ。いっそ、べつべつにくらしの道を考えてはどうだろう?」
    「なるほど。それもよかろう。では新衛門(しんえもん)。三年たったらまたあおう。きっと、わすれずにな」
     ふたりは、あう場所と時間をきめて、
    「では、三年あとに」
    「さらば、三年あとに、かならず」
    と、かたく約束してわかれました。
     月日は流れて、まもなく三年です。
     ところが、山口浪之介(やまぐちなみのすけ)のほうは、どうまちがったのか、世間に名高い盗賊(とうぞく)なって、東海道(とうかいどう)をまたにかけて、あらしまわっていました。
     それがある日、ドジをふんで役人につかまり、きのう、やっとのことで逃げ出して、海へとのがれたのです。
     そのとき、ハッと、約束の日のことを思いだしました。
    「そうだ。このまま東へこいで、江戸へくだろう」
     浪之介は、むしょうに新衛門にあいたくなりました。
    が、運のわるいことに、突風にあって、あっというまに舟もろとも、波にのまれて死んでしまったのです。
     そのころ光川新衛門(みつかわしんえもん)は、江戸にのこって、南町奉行所(みなみまちぶぎょうしょ→裁判所)のしらべ役になっていました。
     友だちの浪之介が盗賊になって、江戸に人相書(にんそうがき→犯人の顔のイラスト)までまわっていることを、よく知っていました。
     今日は約束の日の朝。
    「たとえ、浪之介(なみのすけ)がどのような身になろうと、わしにとっては、かけがえのない友だちだ。あおう。やはりあいにいこう」
     新衛門が、こう心をきめたそのとき。
     なんと目の前に、浪之介がすわっているではありませんか。
    「おお、浪之介。よくきた」
     そういって、新衛門はハッとしました。
    (ばかな、人相書までまわっているおまえが、なんでおれの家などにくるのだ)
    「さあ、浪之介、おれがうしろをむいているいるまに、どうかにげてくれ」
     すると、浪之介はさびしくわらって、こういいました。
    「なにをいうのだ。おれはおまえの手でしばってもらおうと思ったからこそ、わざわざここまでやってきたのではないか」
     浪之介は、小伝馬町(こでんまちょう)の牢(ろう)に入れられました。
     ところがその夜、番人が見まわりにいくと、
    「新衛門どのに、くれぐれもよろしく」
    と、いいのこし、ニッコリわらって、スーッと消えてしまったのです。
     浪之介のすわっていた牢の床は、ビッショリとぬれていました。
     それも、塩気のある海の水だったそうです。
     浪之介は死んでも、約束通り友だちの新衛門に会いに来たのでした。
        おしまい







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