妖怪・怪談


    怪談怖い昔話 第223話 てんじょうを歩く女



    (出典 pbs.twimg.com)


    むかしむかし、武蔵の国(むさしのくに→埼玉県)に、ある城がありました。
     この城では夜になると、五人のさむらいが城の見回りをして、城中にとまることになっていました。
     その夜は一人のさむらいがきゅうに病気になったので、四人で見回りをすませると、一つの部屋にならんで寝ました。
     しばらくすると、一番おくで寝ていたさむらいが目をさましました。
     ふと、ろうかを見ると、ろうかにあるあんどんの明りが、ぼんやりとゆれています。
     もう一度ねむろうとしてまくらをなおすと、となりの男が目をさまして、ふとんの上にあぐらをかきました。
     声をかけるのもめんどうだし、ほかの者たちのめいわくになると思ったのでだまっていると、今度はその向こうの男が目をさまして、同じようにふとんの上にあぐらをかきました。
     あんどんの明りのなかに、二つの黒いかげがゆれています。
     男たちはおたがいに顔をみあわせましたが、ひとことも言葉をかわしません。
    (おかしいな。二人ともねぼけているのだろうか?)
     一番先に目をさました男は、ねむったふりをしながらそう思いました。
     そのときです、一番向こうにねていた男がおきあがって、ふとんの上にすわったのです。
     三人はおたがいに顔をみあわせているのですが、言葉もかわさなければ動きもしません。
    (これはどういうことだ? おれはゆめでも見ているんだろうか?)
     三人の男はまるで置物のように、あんどんの明りのなかでジッとしています。
     いえ、おどろいた事に、いつのまにか自分も三人の男と同じようにおきあがって、ふとんの上であぐらをかいているのです。
    (なんだ、何がどうなっているのだ!)
     男は声をあげようとしましたが、声が出ません。 
     そのとき、あんどんの明りがはげしくもえあがってゆれました。
    と、一番先に目をさましたとなりの男が、立ちあがりました。
     そして部屋の戸口に出ると、長ろうかへのしょうじをしずかに開いて、そこへきちんとすわりました。
     あとの男たちも続いて立ちあがると、やっぱり戸口へ出て、きちんとそこにならんですわりました。
     長ろうかには、あんどんの明りがいくつもおいてあります。
     どこから風が入ってくるのか、明りは青く光ったり白く光ったりしながら、はげしくゆれていました。
     すると、
    「さら、さら、さら」
    と、いう、ぶきみな音がきこえてきました。
     ろうかをこする、衣の音のようです。
     ろうかにはだれもいませんが、音はろうかのつきあたりの方から、だんだんと大きくなってきこえてきます。
     だまって部屋の戸口にすわっている四人の男は、今度は同時にその方へ目をむけました。
     すると、白い長いものが、ろうかの天井からたれさがっているのが見えました。
     なんとそれは女の人で、女の人が白むくの衣きて、ろうかの天井をゆっくり歩いてくるのです。
     白い衣の女は、一人ではありません。
     後ろには腰元(こしもと→身分の高い女性の、身の回りの世話をする人)らしい女が五人、したがっていました。
     さかさまになって天井を歩いてくる女の不思議な行列は、無言(むごん)のうちに四人の男たちの頭の上をとおりすぎて、やがてろうかをまがっていきました。
     お城で城主の奥方が突然なくなり、五人のこしもとがおともをしてあの世へ旅だったという事件を四人のさむらいが知ったのは、それからまもない夜明けのことだったという事です。
        おしまい







    怪談怖い昔話 第222話 かえってきたなきがら



    (出典 www.soedamasaru.jp)


    むかしむかし、京の都のある屋敷(やしき)に、娘がくらしていました。
     父と母にかわいがられて育ちましたが、もう、二人とも死んでしまっていません。
     娘はお嫁にいくこともなく、屋敷をまもっていましたが、ある時、重い病気にかかって死んでしまいました。
     そこで親戚(しんせき)の人たちがお葬式(そうしき)をすることになって、娘のなきがらをひつぎにおさめて、さみしい野原に運んでいきました。
     その途中の事、ひつぎをかついでいた人たちが、
    「おや? どうしたんだろう? 急にひつぎがかるくなったぞ。ちょっと、しらべてみよう」
    と、いいだしました。
     ひつぎをおろしてみると、ふたがほんの少し開いています。
    「あっ!」
     ふたを開けた人たちは、思わずビックリ。
     なんと、たしかにおさめたなきがらが、かげもかたちもありません。
    「どこかに、落としてきてしまったのだろうか?」
    「そんなはずはない。もし落とせば、すぐにわかるはずだ」
    「とにかく、道をもどってみよう」
     親戚の人たちはひきかえしましたが、なきがらを見つける事はできません。
     すると、一人の男が、
    「もしかしたら、あの屋敷に」
    と、娘の屋敷へ出かけてみました。
     すると娘のなきがらが、もとのまま座敷のふとんに横たわっていたのです。
     男はおそろしくなって、親戚の人たちを呼びよせて相談しました。
    「まったく、不思議な事だ。わけがわからん」
    「いずれにしても、明日、あらためて野べ送りをしようではありませんか」
     こうして野べ送りは、あくる日やりなおされる事になりました。
     娘のなきがらは、ふたたびひつぎにおさめられ、しっかりとふたがされました。
    「では、そろそろ運びましょう」
    親戚の人たちがひつぎに手をかけようとすると、しっかりふさいだふたが、わずかに開きはじめたではありませんか。
    親戚の人たちがあっけにとられていると、ふたはさらに開いて、娘のなきがらが立ちあがりました。
    「あわわ!」
    「・・・・・・!」
     親戚の人たちは、腰をぬかして口もきけません。
     ひつぎをぬけだしたなきがらは、もとの座敷のふとんによこたわりました。
    「不気味な事だが、このままにしておくわけにはいくまい。もう一度、ひつぎにおさめよう」
     親戚の人たちはおそるおそる、なきがらをかかえあげようとしたのですが、まるで根をはやしたようにビクともしません。
     そのとき一人のおじいさんが、なきがらの耳もとにはなしかけました。
    「そうか、そうか。この屋敷をはなれたくないというのだな。では、のぞみをかなえて床下にうめてあげよう」
     おじいさんはみんなをさしずして、床をはがしてもらい、穴をほりました。
     おじいさんがなきがらをだくと、今度はやすやすとだきあげられ、床下におろされました。
     親戚の人たちは土をもりあげて、つかをつくると、ホッとした顔でかえっていきました。
     やがて屋敷はとりこわされましたが、つかだけは、今でも残されているそうです。
        おしまい







    怪談怖い昔話 第221話 あやしい火の行列



    (出典 jp.amu-zen.com)


    むかしむかし、琵琶湖(びわこ)のほとりの村で、不思議なさわぎがおこりました。
     大雨があがった、ある夜ふけの事、琵琶湖の中から大入道(おおにゅうどう)のようなものたちがつぎつぎと現れたのです。
     そして大入道たちは松明(たいまつ)のような火をつらねて、伊吹山(いぶきやま)へのぼっていくのです。
     大入道たちはおしだまったままですが、その足音がものすごい地ひびきとなって、村の家々をゆすりました。
     寝しずまった人たちは、
    「地震だ!」
    と、さけんでとびおきましたが、いち早く外へとびだした者たちが、
    「これは地震ではない! 大入道の行列だ!」
    と、ゆれる家の中へ逃げかえっていきました。
     家の中でふるえていると、大入道たちは伊吹山の頂上までのぼりつめたのか、やがて地ひびきも消えていきました。
     次の日の朝、大入道たちが歩いたあとには、三十センチをこえる大きな足跡が、五、六メートルの歩幅(ほはば)でつづいていました。
     その足でふまれた草や畑の作物は、みな松明の火で焼かれたように、足跡の形にこげています。
     こんな不思議な事、五、六十年に一度くらいおこるのです。
     子どものころ出会って、今度が二度目という村のあるおじいさんが、
    「あのときもたしか、大雨があがった夜ふけの事だった。大入道の行列だというが、あれは琵琶湖の底にある竜宮城へまねかれていた伊吹山の明神(みきょうじん)さまが、山へ帰るときの行列じゃよ」
    と、言ったという事です。
         おしまい







    怪談怖い昔話 第129話 産女のゆうれい



    (出典 gakkenmu.jp)


     そのむかしむかし、麹屋町(こうじやまち)という所に、一軒のアメ屋がありました。
     ある夏の夜の事、戸をトントンたたく者があるので、アメ屋の主人が戸をあけると、青白い顔をした姿の若い女が力のない声で、
    「夜ぶん、まことにすみません。アメをわけてください」
    と、一文(いちもん→30円ほど)をさし出したのです。
     アメ屋の主人がアメを手わたすと、女は無言で立ちさって行きました。
     この不思議な女は、次の日もその次の日も、きまって夜おそくやってきました。
     さて、ある晩、アメ屋の主人は、このあやしげな女の後をつけて行くことにしました。
     麹屋町をぬけて、光源寺(こうげんじ)の門の前までくると、女の姿が門の中へ消えてしまいました。
     あたりはぶきみに静まりかえっています。
    (おっかねえな。帰ろうかな)
    と、アメ屋が思っていると、突然に暗やみから、
    「オギャー、オギャー」
    と、赤ん坊の泣き声がひびいてきました。
    「ヒェーー! た、たすけてくれー!」
     アメ屋の主人は寺の本堂にかけこみ、和尚(おしょう)さんを起こしました。
     さっそく和尚さんは、声のする墓(はか)を掘りおこすと、先日うめたばかりの女の死体から、赤ん坊が生まれていたのです。
     赤ん坊を抱きあげてみると、アメ屋の主人が女に売ったアメをしゃぶっているではありませんか。
     あの女は、この子の母親の幽霊(ゆうれい)だったのです。
     赤ん坊は和尚さんに引きとられ、母親の供養(くよう)もすませたある晩のこと、
    「ありがとうございました。子どもを助けていただいたお礼に、あなたさまの願いをなんでもかなえてあげましょう」
    と、アメ屋の主人のまくらもとに、女の幽霊が現れたのです。
     麹屋町では水不足でこまっていましたので、アメ屋の主人は、
    「水がほしい」
    と、たのみました。
     女の幽霊は静かにうなずいて、
    「女物のクシが落ちているところを、ほってください」
    と、言って、消えてしまいました。
     それからしばらくたったある日、アメ屋の主人が麹屋町で、一本の赤いクシをひろいました。
     そこをほりはじめると、にわかに水がわき出したのです。
     そのわき水はつきることなく、町の人はとても喜んだという事です。
         おしまい







    怪談怖い昔話 第219話 やまんばと名刀



    (出典 ic4-a.wowma.net)


    むかしむかし、ある村に、隼助(はやすけ)という若者が住んでいました。
     住む家も小さい貧乏な若者でしたが、先祖(せんぞ)から代々伝わる家宝(かほう)の宝は、とても立派な名刀(めいとう)でした。
     隼助の先祖が立派な手がらを立てて、お殿さまからほうびにもらった物だそうです。
     ある日の事、隼助が山に山ブドウやアケビを取りに出かけると、アケビのつるで編(あ)んだ、大きな大きなカゴをひろいました。
    「おお、これはちょうどいい」
     隼助はその大きなカゴに、ブドウやアケビをたくさん入れて山を下りました。
     さて、その夜の事。
     山の方から、
    「ドシン! ドシン!」
    と、いう、地ひびきが家に近づいたかと思うと、家の戸が、
    「ドンドンドン! ドンドンドン!」
    と、たたかれ、そしてカミナリのような大声で、
    「隼助! わしのぞうりを返せ! わしのぞうりを返せ!」
    と、さけばれたのです。
     隼助は、ブルブルとふるえながら、
    「おっ、おら、人のぞうりなぞ知らねえぞ」
    と、いうと、
    「うそをつくな! おらの干しておいたぞうりの片方を、山から持って行ったでねえか。返せ!」
    「何んだか知らねえが、山でひろったものなら家の裏にほしてあるから、持って行け」
    と、いうと、それっきり静かになりました。
     翌朝、隼助が外にでて見ると、大きな足あとが山まで続いています。
     その大きな足あとは、山でひろった大きなカゴと、同じくらいの大きさでした。
    「この大きな足あとは、きっと山姥(やまんば)だ! そしてあの大きなカゴは、やまんばのぞうりだったのか」
     隼助が山姥におそわれなかったのは、山姥が家宝の名刀におそれをなして、家に入る事が出来なかったからといわれています。
        おしまい






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