妖怪・怪談


    怪談怖い昔話 第102話 百目のアズキとぎ



    (出典 auctions.c.yimg.jp)


     むかしむかし、たびの男が、ひとりでさみしい山みちをあるいていました。
    「ああ、日はくれるし、はらはへるし、こころぼそいことになってしまった」
     男がトボトボと歩いていくと、どこからともなく、
     ショキショキ、ショキショキ
    と、アズキをとぐような音がしました。
    「やれやれ、このあたりに家があるらしい。うちのひとがアズキをといでいるんだろう。いって、とめてもらおう」
     男が音のするほうへいくと、どうしたことか、音がピタリとやんでしまいました。
     あたりは草はらで、家などみあたりません。
     よくみると、足もとにアズキのつぶがちらばっているだけでした。
     男がちらばったアズキつぶをながめていると、そのひとつぶがピョンとうごいて、ピョンピョンピョンとにげだしました。
    「まてまて、どこへいくんだ」
     男がおいかけていくと、アズキつぶが、おはかのところでみえなくなってしまいました。
    「こりゃあ、いやなところに、きてしまったわい」
     男はあわてて、おはかをはなれました。
     すると、さっきのアズキつぶが、うしろからおいかけてきます。
     ところが、男がふりかえると、アズキつぶはピョンときえるのです。
     男はうすきみわるくなって、かけだしました。
     しばらくいくと、だれもすんでいない一けんのあばらや(→あれはてた家)がありました。
    「これはありがたい」
     男があばらやに入って、ホッとしていると、
     ショキショキ、ショキショキ
     また、アズキをとぐような音がきこえてきました。
    「おっかねえ、おっかねえ。あれは、アズキとぎのばけものかもしれん」
     男はふとんをあたまからかぶって、ねることにしました。
     ところが、アズキとぎの音は、ますますせまってきて、
    「おーい、あけろ! ドンドンドン!」
     戸をたたくではありませんか。
     男がしかたなく戸をあけると、赤らがおの大きなばけものがたっていました。
     その顔には、なんと、目が百もついています。
     男が「ぎゃっー!」と、さけんで、にげだそうとすると、アズキとぎのばけものが、ながいうでをのばして、男をつかみあげました。
     つぎの朝、あばらやにはアズキがちらばっていただけで、男はかげもかたちもなくなっていました。
        おしまい







    怪談怖い昔話 第101話 幽霊の仕返し



    (出典 illustimage.com)


     むかしむかし、ある村に、みすぼらしいたびの坊さんがやってきました。
     日もくれてきたので、どこかにとめてもらわなくてはなりません。
     坊さんは、庄屋(しょうや→詳細)さんの門をたたきました。
    「どうか、ひとばん、とめてください」
     すると、庄屋さんは、
    「きのどくだが、とめられん。じつは、このあいだ、たびの男をとめて、だいじなものをとられてしまった。たとえ坊さんでも、たびのものはとめないことにした。さあ、はやく立ち去れ」
    と、門をしめてしまいました。
    「それでは、しかたがない」
     坊さんがトボトボあるいていくと、はかばがありました。
     はかばには、あたらしい土まんじゅうができています。
    「もうしわけないが、ひとばん、ここでごやっかいになりましょう」
     坊さんは土まんじゅうをおがんでから、それをまくらによこになりました。
     むかしは人がなくなると、おはかにかんおけをうずめ、そのうえに、こんもりと土をかけて、おはかにしたのです。
     そのかたちが、まんじゅうににているところから、『土まんじゅう』といったのです。
    「どんな人がなくなったのかなあ?」
     坊さんが、そんなことをおもいながらねむりにつくと、真夜中(まよなか)になって、白いきものをきた男のゆうれいがあらわれました。
    「もしもし、お坊さん」
     坊さんは、そのこえにハッと目をさましました。
    「あなたは、ゆうれいですか?」
    「はい。くやしいことがあって、あの世へゆけないでいます」
    「さしつかえなければ、わけをうかがいましょう」
    「はい、ぜひとも。わたしは、この村の庄屋さんのやしきにはたらいていたものです。ついこのあいだ、やしきにどろぼうが入りました。庄屋さんは、どろぼうがつかまらないはらいせに、『おまえがどろぼうをやしきにひきいれたのだろう。そんなやつはゆるせん』と、わたしにつみをかぶせて、刀できり殺したのです」
    「そりゃあ、ひどい!」
    「わたしは、なんとかしてしかえしをしようと、まいばんゆうれいになって、やしきにいくのですが、やしきのほうぼうに、まじないふだがはってあるため、中に入ることができません。なにとぞ、まじないふだを、一まい、はぎとっていただけないでしょうか」
     ゆうれいは、なみだを流しながら手をあわせました。
     坊さんも、ながいことたびをかさねてきましたが、ゆうれいにたのみごとをされるのは、はじめてです。
    「よし、おやすいことだ。つみもないあんたをころすなんて、とんでもないやつ。すぐにいって、まじないふだをはがしてやろう」
     坊さんは庄屋さんのやしきへとってかえすと、入り口にはってあるまじないふだを一枚、ペッとはがしてやりました。
    「ありがとうございます」
     ゆうれいが、そこから入っていったので、坊さんがかくれてようすをみていると、
    「たすけてくれえ! ゆうれいだー!」
     庄屋さんのさけひごえがしたかとおもうと、
    「たいへんだー! だんなさまがゆうれいにおどろいて、いのちをおとされたぞ!」
     やしきの中は、えらいさわぎになりました。
    「これでゆうれいも、まよわず、あの世へゆけよう」
     坊さんは、しずかにたちさっていきました。
        おしまい







    怪談百物語 第100話 百物語



    (出典 i.ytimg.com)


    むかしむかし、江戸の浅草花川戸(あさくさはなかわど)に、道安(どうあん)という医者が住んでいました。
     ある日のこと。
    《伝法院(でんぽういん)の広間(ひろま)で、百物語(ひゃくものがたり)をもよおすので、ぜひご出席いただきたい》
    と、いう、つかいがきました。
     伝法院(でんぽういん)といえば、浅草境内(あさくさけいだい)にある、ゆいしょある大きな寺です。
     日がくれると、道安は寺へでかけていきました。
     この伝法院には、小堀遠州(こぼりえんしゅう→江戸前期の有名な茶人・造園家)がつくったといわれる、江戸でも名高い、りっぱな庭がありました。
     この庭を前にして、広間には、九十九本のローソクが立てられています。
     そして、その一本一本のローソクのうしろには、九十九人の男女が、きちんとすわっているのでした。
     年はさまざまでしたが、男も女も礼儀ただしくすわっているところをみると、みんな、そうとうな格式(かくしき→身分や家柄がすぐれていること)を持った人たちのように思われます。
    「どうぞ、こちらへ」
     道安は庭が正面に見える、一座のなかの上座(かみざ→目上の人がすわる場所)にすわらされました。
     紋(もん)つき羽織(はおり)に、はかまをはいた、世話役らしい老人が、しらが頭をていねいにさげて、こういいました。
    「では百人、ちょうどそろいましたので、会をひらかせていただきます。今夜はじめてご出席のかたもおられますので、ちょっともうしのべますが、この百物語は、おひとりが一つずつ、ばけものの話をなさって、ご自分の前のローソクを消してまいります。そういたしますと、百本のローソクが消されましたとき、ほんとうのばけものがあらわれるのでございます」
    と、そのとき、道安はカラカラと笑って、
    「この世にばけものなど、おろうはずはない。もしおったら、死んでもよいからお目にかかりたいものじゃ」
    と、いいました。
     すると、広間じゅうのローソクがパッと消えると同時に、そこにいた九十九人が、ひとりのこらずすがたを消してしまったのです。
        おしまい







    怪談百物語 第99話 いうな地蔵



    (出典 userdisk.webry.biglobe.ne.jp)


    むかしむかし、あるところに、すぐにけんかをする、あばれもののばくちうちがいました。
     大きなからだの力持ちですが、はたらきもしないで、
    「なにかええことはねえもんかなあ」
    と、まいにち、ブラブラしています。
     ところがある日、ばくちうちは、
    「おれもこの土地さえでたら、ちったあ運がまわってくるかもわからん」
    と、考えて、ヒョッコリと旅に出ました。
     けれども、運がまわってくるどころか、持っていたお金をすべて使い果たしてしまい、
    「あーあ、はらはへってくるし、銭はなし。どうしたものか」
    と、とほうにくれて、とうげのお地蔵(じぞう)さんの前にこしをおろしていると、下のほうから大きな荷物を重そうにかついでくる、ひとりの男がいました。
    「これはしめた。あのなかにゃ、うめえもんがどっちゃりへえってるにちげえねえ。ひとつ、あいつを殺してとってやれ」
     ばくちうちは、近づいてきた男に声をかけました。
    「おいこら! いったいなにかついどるんじゃい!」
     いきなりどなられた男は、ギョッとして、
    「こっ、こりゃ食いもんじゃ」
    「そんなら、みんなおいていけ! 銭も持ってるなら銭もだせえ!」
    と、ばくちうちは男のかついでいる荷物をつかむと、むりやりひきずりおろそうとしました。
    「い、いや、これはやれん。うちに持ってかえって食わせなならん。子どもらが、はらすかしてまっとんじゃ」
    「そんなことはしらん! よこさんと殺すぞ!」
     ばくちうちは荷物を取り上げると、必死に取り返そうとする男をなぐりつけて、とうとう殺してしまいました。
    「ふん! すぐにわたさん、おまえが悪いんじゃ」
     ばくちうちはまわりを見わたして、人がいないことを確かめると、そばにあったお地蔵さんにいいました。
    「おい。見ていたのはおまえだけじゃ。だれにもいうなよ」
     そして、そのまま荷物を持って立ち去ろうとすると、お地蔵さんが、とつぜんしゃべりました。
    「おう、わしはいわんが、わが身でいうなよ」
     そして、ニヤリとわらったのです。
    「じ、地蔵がしゃべった!」
     ビックリしたばくちうちは、いそいで荷物をかつぐと、山道をころげるように走り去りました。
     それから何十年もすぎた、ある日のことです。
     あのばくちうちは、まだ旅をしていました。
     今ではずいぶん年もとって、どちらかといえば、人のよいおじいさんになっていました。
     旅のとちゅうで、ひとりのわかものと知りあい、そのわかものとすっかり仲がよくなって、ずっといっしょに旅をつづけています。
    「あの山をこえたところに、おらのうちがあるんじゃ。ぜひよっていってくれ」
     わかものにそうさそわれて、ばくちうちは、
    「そうか。では、ちょっとよせてもらおうか」
     話がまとまり、さっそくいそぎ足になったふたりがさしかかったのが、あのお地蔵さんのあるとうげでした。
     ばくちうちがお地蔵さんを見てみると、あの日のことなどまるでうそのように、お地蔵さんの口は一の字にしまっています。
     ばくちうちはつい、なかのよいわかものに、このお地蔵さんのことをしゃべりました。
    「おい、おもしろいこと教えてやろうか?」
    「ああ、なんじゃ」
    「じつはな、この地蔵さんはしゃべるんじゃ」
    「お地蔵さんがしゃべったりするかえ」
    「ほんとうじゃ。げんにこの耳で、ちゃんときいたんじゃ」
    「じゃ、なんてしゃべったね」
     そうきかれて、ばくちうちは、
    「いいか、ぜったいにだれにもいうてくれんなよ。おまえだけにいうんじゃでなあ。ぜったいじゃぞ」
     なんどもなんどもねんをおすと、
    「もう、ずいぶんむかしのことじゃ。そのころはまだ、おらもわかかったで、ずいぶん悪いこともしてきた。・・・じつはおら、ここで人殺してしまったんや。その殺した男というのが、・・・」
     わかものに、あの日のことを全部話してしまいました。
     それを聞いていたわかものの顔が、えんま大王のように、みるみるまっ赤になってきました。
    「うん? どうした、こわい顔をして」
     わかものは、ばくちうちをにらみつけると、
    「それはおらの親じゃ、かたきうちをしてやろうと、こうして旅をしながらさがしていたが、かたきはあんたじゃったのか。おのれ、親のかたき! かくご!」
     わかものはそうさけぶなり、ぬいた刀できりかかりました。
     ふいをつかれたばくちうちは、あっというまに、殺されてしまいました。
     そしてそのとき、あのお地蔵さんがしゃべったのです。
    「ばかな男じゃ、わしはだまっていたのに、自分でしゃべりおったわい」
       おしまい







    怪談百物語 第98話 夜泣きのあかり



    (出典 img01.netsea.jp)


    むかしむかし、信濃の国(しなののくに→長野県)に、満願寺(まんがんじ)という小さな山寺がありました。
     このお寺には夜中のうしみつ時に、かならず山のお堂に明かりをつけにいくという、古くからつたわっているしきたりがありました。
     このお堂の明かりは高いところに灯(とも)されるので、ふもとの村からもよく見えます。
     さて、ある日の事、寺に一人の子どもがつれてこられました。
     この子の父親というのは、長いあいだの浪人(ろうにん)ぐらしで、今ではもう、その日の食べる物にさえこまるようになってしまい、
    「どうか、この子をりっぱなお坊さまにしてくだされ」
    と、この寺にあずけたのでした。
     和尚(おしょう)は新しい小僧がきてくれたので、とても喜びました。
    と、いうのも、ちょうど今までいた小僧が、夜中の明かりをつけにいくのをこわがって逃げ出した後だったのです。
     和尚はさっそく、子どもの頭をきれいにそって寺の小僧にしました。
     次の朝、和尚は明かりをつける小さなお堂まで、小僧を案内しました。
     そのお堂というのは、お寺の裏山の奥の高いところにあって、そこまでいくには、いくつもいくつも暗い岩穴をくぐって、のぼっていかなければなりません。
     和尚でさえ、気味の悪いところです。
     今度きた小僧も、昼でさえ気味のわるいお堂まで、ま夜中に小さなちょうちん一つで行かされたのです。
     木の枝がえりにひっかかっり、岩穴をくぐりぬけるときなどは、コウモリがバタバタと飛び回ります。
     小僧はこわくてこわくて、お堂へ明かりをつけにいくたびに、ふるえて泣き出しました。
     それでも和尚は、
    「なにごとも修業(しゅぎょう)じゃ。しんぼうせい」
    と、言うのです。
     ところがある晩の事、小僧はあんまりこわいので、明かりを灯さずに帰ってきました。
     さあ、その事がわかると和尚はおこって、小僧を木の棒で何度も何度もぶったのです。
     ところが打ちどころが悪くて、小僧はそれっきり死んでしまいました。
     ビックリした和尚は、人に見つからないようにお堂の下に小僧の死体をうめて、
    「やれやれ。また小僧が逃げ出してしもうたわ」
    と、知らん顔をすることにしたのです。
     ところがその晩から、不思議なすすり泣きが、毎晩毎晩、寺の裏山から聞こえてくるようになりました。
     とても悲しそうな声で、それを聞いた寺の人間は、
    「いったい、どこから聞こえてくるのじゃろう?」
    「あまりにも悲しい声で、あれを聞くと寝ることができん」
    と、話していました。
     ある晩、寺男(てらおとこ→雑用係の人)と坊さんたちは、そのすすり泣きを聞いているうちに、いてもたってもいられないようになって、みんなで裏山へでかけたのでした。
     手にちょうちんを持って泣き声のする方へ行くと、やがて木のあいだから、小さな明かりが見えてきました。
    「あれは、たしかにお堂の明かりだぞ」
    「不思議な事じゃ。小僧がおらんのに」
     みんなは思わず足をはやめて、お堂に近づいていきました。
     山のお堂には、だれもつけに来ないはずなのに、明かりがゆらゆらとゆれていたのです。
     次の朝、その話をきいた和尚は急に怖くなって、殺した小僧の供養(くよう)をしました。
     だけれど、すすり泣きは止まらず、毎晩うしみつ時(およそ、今の午前二時から二時半)になると、お堂にはちゃんと明かりがつくのでした。
     さて、あくる年の事。
     ふもとの村に、一人の侍(さむらい)がたずねて来ました。
     かわいいわが子を寺にあずけた、あの父親です。
     その日はもう日がくれていたので、ふもとの百姓(ひゃくしょう)の家に一晩とめてもらいました。
     夜になって、山の上にゆれる明かりを見ると、
    「ああ、あの子もりっぱに、つとめをはたしておるわい」
    と、喜びました。
     ところがその晩のうしみつ時、侍は不思議なすすり泣きに、ふと目がさめました。
     見るとまくらもとに、頭をきれいにそったかわいいわが子がすわっています。
     名前をよぼうとしましたが、金しばりにあって声がでません。
     声だけでなく、起き上がることも出来ないのです。
     あくる朝、父親は奇妙な話を聞きました。
    「この山へいきますと、昼でも山のお堂のほうから、すすり泣きの声が聞こえてくるんですわ。それがまるで、だれかをしとうて泣いておるような、あわれな声でのう」
    「もしや!」
     父親は刀をつかむと、大急ぎで山寺へのぼって行きましたが、二度と山をおりては来ませんでした。
     そしてその夜から、お堂の明かりはつかず、その代わりにまっ暗な満願寺の裏山には、毎晩三つの火の玉が出るようになったという事です。
        おしまい






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