妖怪・怪談


    日本の民話 第373話  ウシの恩返し



    (出典 shopper.jp)


    むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんときれいな娘が住んでいました。
     ある時、お城の若殿さまが狩りに行って、にわか雨に降られたので、おじいさんとおばあさんの家で雨やどりをしたのですが、その時、若殿さまは娘を見染めて(みそめ→気に入り)、
    「近い内に、娘を嫁にもらいに来るぞ」
    と、言って帰って行きました。
     それから二、三日後、おじいさんの家で法事(ほうじ)があり、和尚(おしょう)さんを呼んだところ、和尚さんまでが娘を気に入ってしまいました。
     でも和尚さんは仏(ほとけ)につかえる身で、女性と結婚する事ができません。
     娘は欲しいが嫁にくれというわけにも行かず、そこでおじいさんとおばあさんをだます事にしたのです。
    「じいさま、ばあさま、お前さまの娘はわたしの見たところ、近々ウシになりそうだ。仏さまの前でお経を読んでやるから、二、三日寺によこしなさい」

     翌朝、おじいさんとおばあさんは、カゴ屋を呼んで娘をお寺へやりました。
     ところが酒好きのカゴ屋が、カゴを道に置きっぱなしで酒屋に酒を飲みに行ったのです。
     そこへお城の若殿さまが通りかかり、娘をみつけて城へ連れて行ってしまいました。
     そのあと娘の下りたカゴへ、どこから逃げて来たのか一匹の小ウシが逃げ込みました。
     ちょうどそこへ帰って来たカゴ屋は何も知らずに寺へ行きましたが、いつのまにか娘が小ウシになっていたので和尚さんもカゴ屋もビックリ。
     和尚さんは、おじいさんとおばあさんに、
    「娘はお経を読む前に、ウシになってしまった。もうわたしのお経では、人間にもどす事は出来ません」
    と、おじいさんとおばあさんに、ウシを取りに来させました。
     おじいさんとおばあさんは泣く泣く小ウシを家に連れて帰り、大切に育てました。
     そのうちウシは大きくなり、おじいさんとおばあさんを乗せて田んぼに行くようになりましたが、ある日の事、突然ウシは二人を乗せて走り出して、とうとう城の中へ飛込んだのです。
     突然のあばれウシに、城の中は大騒ぎになりました。
     そこへ、娘が出て来て、
    「おや? 父さんに母さん、よく来てくれましたね」
    と、むかえられて、おじいさんとおばあさんと娘と、それにウシは、お城の中で幸せに暮らしたという事です。
       おしまい







    日本の民話 第372話 カッパのばあさん



    (出典 blog.nagano-ken.jp)


    むかしむかし、ある村の庄屋(しょうや)の奥さんは、男でもかなわない力持ちとして有名でした。
     ある年の夏の終わり頃、庄屋の奥さんは用事があって町まで出かけていきました。
     その日の日暮れ、用事をすませた奥さんが途中の川のほとりまで帰ってくると、小さな男の子が二人で水遊びをしていました。
    「こら、こんなに遅くまで遊んでおって。どこの子じゃ?」
     奥さんがたずねると、男の子はだまって奥さんが帰る村の方を指さしました。
    「それじゃ、途中まで一緒に帰ろうか」
     奥さんが心配していうと、男の子は首をふって、
    「疲れたから、歩くのはいやじゃ」
    と、言うのです。
    「それじゃ、あたしがおぶってやるから、二人とも背中につかまりな」
     そう言って奥さんがかがむと、子どもたちは反対の方へ逃げ出そうとしました。
     それに気づいた奥さんは、あわてて二人の腕をつかまえました。
    「こら、なぜ逃げる。こんなところで遅くまで遊んでおったら、カッパにさらわれるぞ。このあいだも、女の子がカッパに悪さをされたというのに」
     カッパと聞いて、二人の男の子はびっくりした顔をしましたが、すぐに奥さんに言いました。
    「実はおいらたち、カッパだよ」
     それを聞いて、今度は奥さんがびっくりです。
     そのすきにカッパたちは逃げ出そうとしますが、奥さんに腕を強くつかまれているので逃げる事が出来ません。
     奥さんは腕をにぎっている手に力を入れると、怖い顔で言いました。
    「悪さをしたのは、お前たちか! 二度と悪さが出来んように、こらしめてやる!」
     するとカッパは、泣きながら言いました。
    「あいててて。腕がちぎれる。もうイタズラはせんから、ゆるしてくれ」
    「本当か!?」
    「ああ、イタズラは二度とせん。それどころか、川で子どもが遊んでおぼれたら助けてやる」
    「・・・よし、約束だぞ!」
     奥さんは、カッパをにぎっている手をはなしてやりました。

     次の日の朝の事です。
     奥さんが家の軒下(のきした)を見ると、小さな川魚が三、四匹、クギにつるしてあり、その横に大きなお皿が一枚置いてありました。
    「あのカッパが、お礼に持ってきたのかな?」
     それからも川魚は毎朝同じように、軒下のクギにつるされました。

     ある日、庄屋さんが、
    「クギをもっと大きな物にしたら、もっと大きな魚を持ってくるかもしれんぞ」
    と、言って、クギをシカの角と取り替えました。
     するとカッパはそれっきり、魚を持ってこなくなりました。
     なぜならカッパは、シカの角が大きらいだからです。
     そして最初の日にカッパが置いていった大皿は『カッパ皿』と名づけられて、庄屋の家の家宝(かほう)として大切にされました。
     奥さんはそれから三十年も長生きをして、「力持ちのカッパばあさん」とよばれて死ぬまで村の子どもたちにしたわれていたという事です。
       おしまい







    日本の民話 第371話 弁天島とアブ



    (出典 www.asobinotubo.com)


    むかしむかし、柳(やなぎ)という男の人が釣り友だちの若者を連れて、海へ釣りに行きました。
    「柳さん、今日の潮なら、このあたりがいいでしょう」
    「そうかい。まかせるよ」
     若者は釣りに詳しいので、柳はその場所で釣り糸をたらしました。
     その途端、サバが食いついてくるのです。
    「おっ、いい当たりだ!」
     柳と釣り友だちはどんどんサバを釣りあげて、とうとう小舟がいっぱいになりました。
    「いやー、こんなに面白い釣りは初めてだ」
     ふと見ると釣りに疲れたのか、釣り友だちの若者はグーグーといびきをかいて寝ています。
    「おい、こんなところで寝ると、かぜを、・・・おや?」
     柳が釣り友だちの若者を起こしてやろうとすると、何と若者の鼻の穴から三匹のアブが、ブーン、ブーン、ブーンと飛び出して来たのです。
     そしてそのアブはまた若者の鼻に入り、すぐにブーン、ブーン、ブーンと飛び出して行きました。
    (はて? こんな海の上に、どうしてアブがいるのだろう?)
     柳が首をかしげると、若者が目を覚ましました。
    「ああ、失礼しました。いつの間にか、眠ってしまいました。しかし、変な夢を見ましたよ」
    「変な夢? どんな夢かね?」
    「はい。村の丸堂から、三体の仏さまがアブになって飛んで来られたのです」
    「ほう、三匹のアブねえ・・・」
     柳は少し考えると、若者に言いました。
    「なあ、その夢をわたしに売ってくれないか? 夢の代金として、今日のサバは全部お前にあげるから」
    「夢をですか? そりゃ、構いませんけど」
     若者はサバと交換で、自分の見た夢を売ることにしました。

     さて、夢を買った柳は浜辺に戻ると、そのまま村の丸堂と呼ばれているお堂へ走って行きました。
     そしてゆっくりと、お堂のまわりを歩きました。
    「どこだ? アブは、どこだ? ・・・おおっ、あれだな」
     お堂の壁の小さな割れ目から、三匹のアブが出たり入ったりしていました。
    (よしよし、夢の通りだ)
     柳は頭にかぶっていた笠(かさ)で、三匹のアブをパッと捕まえました。
     そして大急ぎで屋敷に帰って座敷の戸を閉めると、アブを捕まえている笠をのけました。
    「あっ!」
     柳は、びっくりです。
     何と出てきたのはアブではなく、輝くほど美しい三体の仏の像だったからです。
     よく見るとそれは、阿弥陀(あみだ)、弁天(べんてん)、毘沙門(びしゃもんてん)でした。
    「これは、大した物だぞ」
     柳は美しい三体の仏像を全部自分の家に置くのは申しわけないと思い、阿弥陀は村の勝安寺(しょうあんじ)というお寺に納める事にしました。
     弁天は、小さな島に納めました。
     そのために島は、弁天島と呼ばれるようになりました。
     そしてもう一つの毘沙門の像は、今も柳さんの屋敷の宝物として祭ってあるそうです。
        おしまい







    日本の民話 第370話  タヌキのお梅



    (出典 shop.r10s.jp)


     むかしむかし、ある町に吉平(きちべい)という、歌の上手な男がいました。
     ある夏祭りの夜、いつものように庄屋(しょうや)の家のひろい庭で盆踊りがはじまりました。
     踊りの輪のまん中には、おもちをつく臼(うす)をさかさに置いた音頭台(おんどだい)があります。
     その上に立って何人かの音頭取りが代わる代わる自慢の声をはりあげていました。

     さて、最後の音頭取り、もちろん吉平です。
     他の者たちも吉平の出番を待っていて、帰る者はほとんどいませんでした。
     そして音頭台にあがった吉平は、見事な歌で踊る人たちを楽しませました。
     その吉平が、家に帰る途中で行方不明(ゆくえふめい)になっていたのです。
     村人たちは近くの村々にまで出かけて探しましたが、吉平の行方はまるでわかりません。
    「これだけ探しても見つからんのは、もしや・・・」
     村の老人が、ポツリと言いました。
    「じいさん、何か知っているのか?」
     村人の一人がたずねると、老人が言いました。
    「子どもの頃に聞いた話だが、タヌキは歌の上手な人間が好きで、歌が上手な者がいると連れ去るそうだ」
     その話を聞いて、だれもが風呂(ふろ)ノ谷に住む古ダヌキのお梅(うめ)の事を思い出しました。
     そこでみんなで、風呂ノ谷へ出かけていきました。
     うす暗い谷底を進むと、むこうの岩の上に吉平の姿が見えました。
     吉平はタヌキのお梅とむかいあってすわり、仲むつまじそうに話をしています。
     その時、村人に気がついたタヌキのお梅は吉平になにか耳うちをして、岩のうしろへ姿を消しました。
     すると吉平は急に、岩の上で倒れてしまったのです。
     村人たちがかけよって、
    「吉平! 吉平!」
    と、よびましたが、吉平は答えません。
     仕方なく村人たちは気を失っている吉平を背負うと、家まで連れて帰りました。
     ふとんに寝かせても吉平は青ざめた顔をして動きませんでしたが、真夜中になるとむっくり起きあがりました。
    「お前さん。気がついたんだね」
     奥さんが声をかけましたが、吉平はきょとんとした顔つきで遠くを見つめるばかりです。
     そして、
    「お梅、お梅」
    と、タヌキの名前を呼びながらフラフラと家から出ていこうとするので、村人たちが取り押さえて柱にしばりつけました。

     吉平は数日後に正気に戻りましたが、話を聞くとタヌキのお梅が若い娘に化けて、歌の上手な吉平の奥さんになったつもりでいたという事です。
        おしまい







    日本の民話 第369話 桜島と飯牟礼山



    (出典 www.qkamura-s.com)


     むかしむかし、とても大きな大鬼がいました。
     あまりにも大きいので、そのあたりの山をひとまたぎに歩くほどです。
     また大きいだけではなく、とても力持ちでした。

     ある日の事、この大鬼は山から下りて行くと、村人たちに向かって大声で言いました。
    「ええか、みんな。このおいが、桜島(さくらじま)と飯牟礼山(いいむれさん)と、どっちが重いか、かついで見るで」
     そして、大きな大きなもっこ(→農産物などを運ぶ用具)を運んできました。
     そして両端に桜島と飯牟礼山をつり下げてみると、飯牟礼山よりも桜島の方がはるかに重く、何度やってもバランスがとれません。
    「まっこと、腹の立つ!」
     気の短い大鬼は、もっこのにない棒を振り上げると、腹いせに桜島の頂上をバンバンと叩きました。
     そのために今でも桜島の頂上は、でこぼこになっているのです。
     それからそのとき、あまりにも足を踏ん張ったので足が地面にめり込んでしまいました。
     その足跡の一つが、伊集院の恋の原という所に、今でもそのまま残っているそうです。
        おしまい






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