妖怪・怪談


    日本の民話 第253話 大力権兵衛



    (出典 upload.wikimedia.org)


    権兵衛街道快走

    (出典 Youtube)


    むかしむかし、神谷(かみや)に権兵衛(ごんべえ)という力持ちがいました。
     権兵衛は力が強いだけでなく、そばの大食いでも評判でした。
     何しろ二升のそば粉で作ったそばを、ペロリと食べてしまうのです
     ところがちょうど同じ頃、薮原(やぶはら)にも、
    「そば食いでは、誰にも負けねえぞ」
    と、いばっている坊さんがいました。
     あるとき、この二人がそば屋で顔を合わせて、さっそくそばの大食い勝負をすることになったのです。
     さすがに二人とも、ものすごい大食いで、なかなか勝負がつきません。
     そしてそば屋のそばが全部なくなってしまい、勝負は引き分けになってしまいました。
     ところがそのとき、坊さん急に腹かかえて苦しみ出して、その日の晩に死んでしまいました。
     それを聞いた権兵衛はびっくりして、
    「なんて申し訳ねえことを。おれのために、坊さんが一人死んでしまった」
     権兵衛は泣く泣く坊さんの弔いをすませたものの、どうにも気持ちがおさまりません。
     そこで罪ほろぼしに、何か村のためにすることはないかと考えました。
     そして、こんなことを思いついたのです。
    「木曽(きそ)の山中は、田んぼが少なくて米がとれねえ。だから山中に道を開いて、伊那(いな)と行き来できるようにしよう」
     こうして、権兵衛の道づくりが始まりました。
     権兵衛は毎日、山で木を倒して岩を堀り出すと、土をならしました。
     それを何ヶ月も続けて、やっとのことで権兵衛は木曽から伊那に通じる道をつくったのです。
     そして自分で牛を引きながら木曽の木を伊那へ運んだり、また伊那からは米を運んだりして村のためにつくしたのです。
     このとき権兵衛が切り開いた道は『権兵衛街道』といい、またその途中にある峠は、『権兵衛峠』と呼ばれるよう になりました。
     今でも、『権兵衛街道』と『権兵衛峠』は残っているのです。
       おしまい







    日本の民話 第252話 金歯の小人



    (出典 www.shikakin.net)


    金歯ができるまで

    (出典 Youtube)


     むかしむかし、ある漁師が漁の途中で嵐に出会い、今まで誰も来たことがない島へと流されました。
    「よし、舟は何とか無事だな。今夜はこの島で過ごして、明日の朝早くに帰ろう」
     舟を下りた漁師が草むらで寝ていると、すぐそばの草むらから何やら人の声が聞こえてきます。
    「はて、この島に人がいたのかな?」
     漁師が草むらをかき分けてみると、そこには小鳥ほどの大きさの小人たちがいて、その先にいるイタチが小人たちを狙っていたのです。
    (なんだ? おれは夢でも見ているのか?)
     漁師は首を傾げましたが、とにかくその小人たちを助けようと、イタチを追い払ってやりました。
     すると小人たちは漁師が初めて聞く言葉でお礼を言うと、口を開けてにっこり笑いました。
     その開いた口の中を見て、漁師はびっくりです。
     なんとその小人たちの歯は、全て金で出来ていたのです。
     小人たちは自分たちの金歯を次々と抜くと、お礼のつもりなのか、漁師の前に差し出しました。
     その時、漁師は目を覚ましました。
    「なんだ、さっきの小人は夢か。小さくてもあれだけの金歯があれば、それなりの金になったのに。・・・いや、夢じゃないぞ!」
     目覚めた漁師のすぐ横に、小人たちの金歯が置いてあったのです。
     漁師はその小人の金歯を持って帰ると、町へ行ってとても多くのお金と交換しました。

     さて、その話を聞いた友だちの欲張り漁師が、自分も小人の金歯を手に入れようと、漁師から聞いた島へとやって来ました。
    「お人好しのあいつは小人にもらったわずかな金歯で満足していたが、おれはそうはいかないぞ。小人の奴を全部捕まえて、全員の金歯を抜き取ってやる」
     こうして欲張り漁師は一晩中かかって小人たちの村を見つけると、小人たちに襲いかかって、小人たち全員の口から金歯を引き抜いたのです。
    「あはははは。これだけ金歯があれば、おれは大金持ちだ」

     次の朝、欲張り漁師は町へ行くと、小人たちから引き抜いた金歯の入った袋を差し出して言いました。
    「この袋の金歯を、金に換えてくれ」
    「へえ、金歯ですか」
     受け取った問屋は、その袋の中をのぞきました。
     そしてけげんそうな顔で、欲張り漁師に言いました。
    「何が金歯ですか。これは、ただの歯ではありませんか。こんな物は、一文にもなりませんな」
    「なに、そんなはずは・・・」
    と、言いかけた欲張り漁師は、口の中がすーすーして、うまくしゃべれない事に気づきました。
    「まっ、まさか・・・」
     欲張り漁師が自分の口の中に指を入れてみると、何と自分の口には歯が一本もありませんでした。
     そして小人の金歯が入っているはずの袋を開けてみてると、中には自分の歯が入っていたのです。
       おしまい







    日本の民話 第251話 クジラの皮の絵



    (出典 upload.wikimedia.org)


     むかしむかし、あるところに、とてもゆかいなお百姓(ひゃくしょう)さんがいました。

     ある日の事、お百姓さんが町へ行って宿屋に泊まると、頭の毛を長くのばした男の人と同じ部屋になりました。
    (はて、この人はどんな仕事をしている人だろう? お百姓には見えないし、物売りにも見えないし)
     お百姓さんが男の人をジロジロ見ていたら、男の人が怖い顔で、
    「何か! ご用か!」
    と、言いました。
     そこでお百姓さんは、
    「これは、失礼しました。
     あの、失礼ついでにおたずねします。
     お前さんはふつうの人に見えません、一体どんな仕事をしている人ですか?」
    と、たずねました。
     すると男の人は、大いばりで言いました。
    「わしは、絵かきじゃ! お前の様な百姓とは違うわ!」
     その態度に、お百姓さんはムッとして、
    「なんだ、お前も絵かきか。それなら、わしと同じ仕事だ。大した事はない」
    と、言ったのです。
    「何と、お前も絵かきか。
     よし、そんなら一つ絵の腕比べをしようじゃないか。
     まずはわしが、先にかいてみせよう」
     絵かきはふでと紙を取り出すと、さらさらっとかきあげました。
     それは、男の人が川からあがってくる絵です。
    (ほう、なかなかうまいもんだ)
     お百姓さんは感心しながらも、わざとつまらなそうな顔で言いました。
    「お前さんは、本物の絵かきですか?」
    「当たり前じゃ! この絵はさっき川で泳いでいた人を見ていたので、それをかいた物じゃ」
    「そうですか。
     でもお前さんは、まだまだ見方がたりませんね。
     これではとても、一人前の絵かきとは思えません」
    「なんだと!」
    「この絵を、よく見てごらんなさい。
     足の毛が、みんな立っています。
     人が川からあがった時は、毛はぬれてピッタリとはりつくはずですよ」
    「ぬぬっ、・・・そんな細かいところまで、いちいちかけるか!」
    「だからお前さんは、まだ一人前の絵かきじゃないと言ったのですよ」
     お百姓さんに言われて、絵かきはくやしくてたまりません。
    「ようし、そんならお前がかいてみろ」
    「わかりました。
     わたしは、こんなつまらない絵はかきません。
     絵をかくには、物の特徴(とくちょう)をしっかりとつかむ事が大切なのです」
    「ぬぬぬっ。・・・いいから、はやくかけ!」
    「では」
     お百姓さんはふでにたっぷりすみをつけると、ペタペタペタと紙をまっ黒にぬりはじめました。
     絵かきがビックリして、
    「これは、何の絵だ?」
    と、尋ねたら、お百姓さんはすました顔で言いました。
    「クジラの皮です」
    「はあ? クジラの皮だと? ただ、まっ黒にぬりつぶしてあるだけじゃないか」
    「そうですよ。
     クジラというのは、人の何十倍もある大きな生き物です。
     こんな小さな紙一枚では、とうていかけません。
     だからこうして、皮のはしっこのところだけをかきました」
       おしまい







    日本の民話 第250話 薬王寺の上り竜と下り竜



    (出典 resize.blogsys.jp)


    むかしむかし、帷子(かたびら)というところが毎日の日照り続きで、村人たちは困っていました。
     そこで村人たちは、来る日も来る日も薬師堂にこもって、雨ごいのお祈りをしていたのです。
     そんなある日の事、一人の老人が、ふと上を見上げて、高梁(たかばり)に彫られた竜を見つめました。
    「ほう。さすがは名人といわれた林市衛門と玉置吉兵衛が作っただけの事はあるのう」
     すると、ほめられたのがうれしかったのか、下り竜の舌がペロペロと動き、上り竜の尾がピクピクと動いたのです。
     それを見た老人は、思わず竜に手を合わせて言いました。
    「竜よ、心あるなら聞いておくれ。この村はな、もう一ヶ月も雨が降らんのじゃ。もう、何もかも枯れてしまい、このままでは村は全滅じゃ。お前たちが本当に水を呼ぶ事が出来るのなら、どうか雨を恵んでくだされ」
     すると不思議な事に、晴れ渡っていた空に黒雲がひろがって稲妻が光ると、いきなり、ものすごい雨がザーザーと降り出したのです。
    「おおっ、雨だ! 竜が雨を降らせてくれたぞ!」
     村人たちは飛び上がって喜びましたが、今度はその雨があまりにも振り過ぎたために、大水で田畑が流されそうになったのです。
     するとあの老人は、また薬師堂へ行って竜に手を合わせました。
    「いくら雨が欲しいと言っても、これでは田畑も家も大水に押し流されてしまう。どうか、雨をやませて下され」
     すると、たちまち雷鳴はおさまって、空は青く晴れ渡ったのです。
     この大雨のおかげで、死にかけていた田畑は生きかえりました。
     そこで村人たちは、再び薬師堂にお礼のお参りをしたのです。
     そして、ふと高梁の竜を見上げてみると、不思議な事に下り竜の片目がつぶれていたということです。
       おしまい







    日本の民話 第249話 ハマグリの食べ方



    (出典 ferret-one.akamaized.net)


     むかしむかし、山奥の村人たちが庄屋さんと一緒に、生れて初めての旅行に出かけました。
     そして、ある立派な宿屋に泊まると、夕ご飯にハマグリのお吸い物が出てきたのです。
     山奥に住んでいたため、生まれて始めて貝を見た村人たちは、そのハマグリをどうやって食べたらいいのかわかりません。
     そこで、みんなは庄屋さんに食べ方を尋ねたのですが、庄屋さんも貝は始めて見るので、どうやって食べたらいいかわからないのです。
    「はて。こんな固い物、どうすればいいのか。・・・しかし、いくら固くても汁の中に入っているのだから、噛むより仕方ないだろう。でも、中のやわらかい物は腹わただから、食べないようにな」
     そう言って庄屋さんは、おいしいハマグリの身を捨てると、ハマグリの貝がらをバリバリと噛んで食べました。
    「そうか、ああやって食べるのか」
     そしてほかのみんなも、頑張って貝がらをバリバリと噛んで食べたそうです。
       おしまい






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