妖怪・怪談


    日本の民話 第321話  三吉さま



    (出典 upload.wikimedia.org)


     むかしむかし、あるところに、子どもがいないおじいさんとおばあさんがいました。
    「明神さま、お願いします。わしらはもう年ですが、どうか、子どもを授けてください」
     二人が明神さまにお願いしていると、
    「おぎゃー」
    と、 どこからか赤ん坊の泣き声がしたのです。
    「おや?」
     二人が声の主を探してみると、なんと元気のいい男の赤ん坊が、道ばたに捨てられていたのです。
    「これはきっと、明神さまが願いをかなえてくれたに違いない」
     そう考えた二人は、赤ん坊に三吉(さんきち)と名づけて大事に育てました。
     三吉はとても頭のいい子どもで、ちょっと教えただけで、読み書きもそろばんも出来るようになりました。
     おまけに大変な力持ちで、たった一人で田んぼの稲を刈り取って、家ほどもある大きな束にすると、
    「えいっ!」
    と、背中にかついで持って帰るのです。
     おまけに心優しく子ども好きなので、三吉が年頃になると、三吉のお嫁さんになりたいという女の子が村にはたくさんいました。
     でも、三吉は、
    「おら、誰とも結婚なんかしねえぞ」
    と、言うのです。
     やがて三吉が十八才になると、三吉はおじいさんとおばあさんにこう言いました。
    「じいさま、ばあさま、今日まで育ててくれてありがとう。本当に感謝している。だけど、おらは明神さまとの約束で、十八になったら神さまにならねえといけねえんだ。だから、今日でみんなともお別れだ」
     おじいさんもおばあさんもびっくりしましたが、けれど三吉は明神さまから頂いた子どもです。
     しかも、これから神さまになるというのですから、引き止めるわけにはいきません。
     そこで二人は涙をこらえながらも、三吉が旅立つのを見送ることにしました。

     さて、それから数ヶ月後、村に大雨が降って、村人たちが大切にしている橋が壊れてしまいました。
    「どうしよう。これでは仕事に行けねえぞ」
    「だども、直そうにも簡単には・・・」
     みんなが困っていると、ふらりと三吉が現れて、
    「よし。おらが橋をかけてやるだ」
    と、持ち前の力で、あっという間に橋を直してくれたのです。
     それからも三吉は時々姿を現すと、村の子どもたちと遊んでやったりしたそうです。
     でも、三吉は神さまになったためか、村を出てから何年もたっていないのに、ひげが真っ白のおじいさんになっていたということです。
       おしまい







    日本の民話 第320話 オオカミの恩返し



    (出典 tg-kids.net)


     むかしむかし、ある山の中の一軒家(いっけんや)に、お母さんと息子が暮らしていました。
     二人はひどい貧乏だったので、お母さんも息子も毎日毎日働きづくめです。

     ある日の真夜中の事、お母さんが急の病(やまい)にかかって苦しんでいました。
     医者は、山の向こうの里にしかいません。
     それに山にはたくさんのオオカミがいるので、夜になると誰も外に出ようとはしません。
     ですが息子は、お母さんの病気を治したい一心で出かけました。
    「お願いだ。オオカミよ、どうか出ないでくれ」
     息子は神さまにいのりながら山道を急ぎましたが、やっぱりオオカミは出てきたのです。
     一匹の大きなオオカミに、まっ赤な目でにらまれた息子は、
    「オオカミよ、今だけはおらを食うのをかんべんしてくれ。おっ母さんが、病気で苦しんでいるんだ。お医者さまを、連れて来ないと。だからたのむ、見逃がしてくれ」
    と、言いましたが、オオカミはこっちへ近づいてきます。
    「たのむ。お医者さまを連れて来たら、きっと食われに来るから」
     息子は泣いてたのみましたが、オオカミはどんどん近づいてきます。
     オオカミの息が顔にかかったとき、息子は目をつぶってオオカミに食べられるのを覚悟しました。
     ですがオオカミは、かみついてきません。
    (もっ、もしかして、見逃してくれたのか?)
     息子がゆっくりと目を開けると、オオカミはやっぱり目の前にいます。
    「ヒエーッ!」
     息子は再び目をつぶりましたが、オオカミはその場にジッとしています。
    (どうした? どうして、かみつかないんだ? 何か、言いたい事でもあるのか?)
     不思議に思った息子がオオカミを見ていると、どうもオオカミの様子がおかしいのです。
     舌をベロンと出して口を大きく開けたまま、何度も頭を下げたり上げたりしています。
     どうも、口にある何かをうったえている様子です。
     息子がオオカミの口の中をのぞいてみると、キラリと光る物がありました。
    「おや、のどに骨が刺さっとるぞ」
     息子はオオカミののどに手を入れて、刺さっていた骨を抜いてやりました。
     するとオオカミは何度も何度も頭を下げて、そのまま立ち去っていきました。

     息子は何とか無事に医者の家をたずねたのですが、医者はオオカミを怖がって外に出ようとはしません。
     そこで息子は薬だけをもらって、急いで山道を引き返していきました。
     すると今度は四、五十匹ものオオカミが息子に寄って来て、するどいキバを息子に向けました。
    (ああっ、今度こそだめだ。おっ母さん。すまん!)
     息子が覚悟を決めたその時、突然大きなオオカミが飛び込んで来て、取り囲んでいるオオカミに向かってほえました。
     すると息子を取り囲んでいたオオカミたちは、一斉(いっせい)にどこかへ行ってしまいました。
     この大きなオオカミはさっき息子が骨を抜いてやったオオカミで、オオカミの大将だったのです。
     息子はオオカミの大将に守られながら、無事に家に帰ることが出来ました。

     次の朝、息子が家を出ようとすると、家の前にイノシシやウサギやキジなどの獲物(えもの)が、山のようにつまれています。
     息子はそれをふもとの里に売りに行き、たくさんのお金を手にすることが出来ました。
     また、お母さんの病気もすっかりよくなったので、二人は幸せに暮らすことが出来ました。
       おしまい







    日本の民話 第319話  古木の血



    (出典 worlddecors.com)


     むかしむかし、三重のある村の長者が庭に出て涼んでいると、西の空が明るく光り輝いているのが見えました。
    「はて。あれは、何の光じゃろうか?」
     不思議に思った長者が行ってみると、となり村とのさかいにある小さな湖に枯れ木が浮いていて、それがまばゆい光を放っているのでした。
    「これは湖の底にあるという、竜宮御殿に使われている木の一部にちがいない」
     長者が枯れ木を湖から引き上げると木は光らなくなりましたが、長者はそれを家に持って帰って大切にしました。

     それからしばらくたったある日、旅の途中の弘法大師(こうぼうだいし)が、この村を通りかかりました。
     大師が来たことを知った長者は、大師を自分の屋敷に招いてもてなすと、あの光る枯れ木の話をしました。
     すると大師は、床の間に置かれていた枯れ木をじっと見つめて言いました。
    「確かに、この木からは、ただならぬ力を感じる。
     もしよろしければ、この木で地蔵菩薩(じぞうぼさつ)の像を彫りたいと思うが、いかがであろうか」
    「それはそれは、まことにありがたいことで」
     有名な大師が彫ってくれるというので、長者は大喜びです。

     大師は長者から一本のノミを借りると、菩薩像の頭から彫っていきました。
     カーン、カーン。
     大師がひとノミ入れるたびに、枯れ木は不思議な光を放ちます。
     さすがの大師も、少し興奮気味です。
     ところが一心に刻んでいって、菩薩像を腰のあたりを彫り進んだとき、突然枯れ木から真っ赤な血が流れ出たのです。
     これには大師も驚いて、
    「ぬぬっ。この木は、生身の菩薩じゃ。わたしの様な未熟者では、これ以上木を刻む事は出来ません」
    と、言うと、がっくりと肩を落として彫るのをやめてしまいました。

     こうして腰から下が未完成の菩薩像は村のお寺へと移されて、お寺の本尊としてまつられたという事です。
       おしまい







    日本の民話 第318話 助けたツルの恩返し



    (出典 d2dcan0armyq93.cloudfront.net)


    むかしむかし、岡山の瀬戸内海にうかぶ大きな島へ、三羽の親子ヅルがわたってきました。
     親子ヅルが島へ入ろうとしたとき、子ヅルがバランスをくずして海に落ちてしまいました。
     親ヅルたちは海に落ちた我が子を救おうとしましたが、助ける手立てがありません。
     親ヅルたちがうろうろしていると、これに気づいた島の漁師が舟を出して子ヅルを助けました
     漁師は子ヅルを空へ戻そうとしましたが、子ヅルは羽をバタバタさせるばかりで飛ぶことができません。
    「どうした? 。ケガでもしたのか?」
     困った漁師は子ヅルを連れて、庄屋さんのところへ行きました。

      庄屋さんが子ヅルを見てみると、子ヅルはタカにでもおそわれたのか体と脚にケガをしていました。
    「このケガで、海に落ちたんじゃな。だが大丈夫」
     庄屋さんは薬を調合して、痛めている脚に添え木をしてやりました。
      そのおかげで子ヅルのケガはすぐに良くなり、数日後には親鳥たちが待つ島へと帰っていきました。

     さて、それから三年ほどたった年のお正月。
     庄屋さんが早起きをすると、二羽のツルが庄屋さんの家の上を舞い続けていました。
     二羽のツルは明るくなると山へ帰って行きましたが、夕方になるとまたやって来て、何度も何度も家の上を舞ってから去って行きました。
      それを見送った庄屋さんが家に入ろうとすると、家の前に黄色い小さな棒きれの様な物が二本落ちています。
    「・・・これは!」
      庄屋さんの顔色が、さっと変りました。
      棒きれかと思った物は、万病に効くという高価な朝鮮人参だったのです。
    「朝鮮人参など、この島にあるわけがない。・・・もしかするとさっきのツルが」
     庄屋さんの思った通り、庄屋さんに助けられたツルが朝鮮から海をこえて、庄屋さんに朝鮮人参を持ってきたのです。
    庄屋さんは二本の朝鮮人参を見つめながら、助けたツルの恩返しに感謝をしました。
       おしまい









    日本の民話 第317話  こぼし石



    (出典 livedoor.blogimg.jp)


    むかしむかし、普門寺(ふもんじ)というお寺に、カッパが住んでいました。
     ここのカッパはお寺の小坊主よりもずっと小さかったので、「こぼし」という名前が付けられていました。
     このこぼしは髪の毛を長くのばし、頭の上の部分だけがはげになっています。
     カッパは頭のはげの部分がいつもぬれていて、もしこの頭のはげがかわくと死んでしまうと言われています。

     さて、この村には一軒だけ、ウマを飼っている家がありました。
     村人たちはこの一頭のウマをめずらしがって、毎日たくさんの人が見に来ていました。
     ある日の事、こぼしもウマを見に行きましたが、ウマはこぼしに尻をむけて知らぬ顔をしています。
     そこでこぼしが、
    「なんだ! おれが来たのに知らん顔をするとは、けしからんではないか!」
    と、怒ると、ウマは尻をむけたまま言いました。
    「なんだ、普門寺に住むカッパか」
    「そうだ、こぼしだ。わかっているなら、少しはこちらをむいたらどうだ。このウマめ!」
     こぼしはそう言うと、ウマの尻尾を引っ張りました。
     すると怒ったウマが、後ろ足でこぼしをけりつけたのです。
     けられたこぼしは地面を転がって、大切な頭のはげに大けがをしてしまいました。
     するとそのはげのけがから、水がポタポタと流れ落ちました。
    「大変だ! このままでは頭がかわいてしまう!」
     こぼしはあわてて海岸へ行くと、そこに落ちている二つの石を拾いました。
     そしてその石をお寺へ持って帰ると、頭のはげのけがの上に重ねて置いたのです。
     すると傷はたちまち治って、水が流れ落ちるのが止まりました。
     これを見ていたお坊さんが、こぼしに言いました。
    「なんとも、けっこうな石じゃなあ。ぜひ一つ、残していってくれ」
     そこでこぼしは一つはお寺に、もう一つはもとの海岸に返しました。

     さて、お寺に残された石は不思議なことに、時々、
    「水がほしい、水がほしい」
    と、言うそうです。
     そこでこの石に水をかけてやると、石は喜んで人々を水難から守ってくれると言われています。
       おしまい






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