妖怪・怪談


    日本の民話 第243話 長者になりそこねた欲張り



    (出典 www.yamatobito.net)


    「欲ばり喜伊」日本昔話

    (出典 Youtube)


     むかしむかし、ある村に、とても欲張りな男がいました。
     その欲張り男がとなりの家から、産み立てのたまごを三つもらいました。
     欲張り男はとても喜んで、そのたまごを指でいじりながら考えました。
    (さあ、このたまごをヒヨコにかえして、ニワトリに育てよう。
     するとそのニワトリが、たまごを産むだろう。
     一羽が十個のたまごを産んだとして、あわせて三十個だ。
     それをまたヒヨコにかえしてニワトリに育てる。
     そうやってどんどんニワトリをふやしたら、今度はそのたまごを町へ売りに行こう。
     毎日毎日、荷車にたまごを山のようにつんで町へ売りに行くんだ。
     するとお金がどんどんもうかって、おれは村一番の金持ちだ。
     うっししし。
     さて、金持ちになったら何をしようか?
     そうそう、まずはおいしい物をたくさん食べよう。
     それから大きな牛を何頭も買うんだ。
     牛を育てるためには、たくさんの草がいるから、広い田んぼや畑も買わなくちゃな。
     でも、一人で牛を育てたり、田んぼや畑をたがやすことは出来ないから、大勢の人をやとうとしよう。
     それには、こんなちっぽけな家じゃ駄目だ。
     うーんと広い家をたてなくちゃな。
     そうなれば、もうおれは長者さまだ)
     欲張り男は、すっかり長者になった気分で、みんなをどうやって働かそうかと考えました。
    (まず、なまけ者は許さないぞ。
     仕事もしないで遊んでいるやつは、こうやって首をしめて、
    『しっかり働かないと、ひねりつぶしてしまうぞ。』
    と、おどかしてやろう)
     欲張り男は手に持っていた三つのたまごを、思わず握りしめました。
     そのとたん、
     グシャ!
    と、いう音がして、大切なたまごが割れてしまいました。
     欲張り男は泣きそうな顔になり、
    「しまった。長者さまになりそこなった」
    と、言ったそうです。
       おしまい







    日本の民話 第242話 カッパのトゲ抜き薬



    (出典 fushigi-chikara.jp)


    むかしむかし、ある屋敷の裏の井戸(いど)に、毎日の様におかっぱ頭の男の子がやって来ました。
     男の子は深い井戸の中をしばらくのぞき込んでは、スーッとどこかへ消えていくのでした。
    「何をしているのだろう? 今度来たら、話しをしてみよう」
     屋敷の人たちはそう思いましたが、男の子は気がつくと、もう姿がないのです。
     話を聞いた屋敷の主人は、井戸のわきにひそんで男の子が来るのを待ちかまえました。
     用心のために、刀(かたな)を持っています。
     そこへ何も知らない男の子がやって来ると、いつもの様に井戸の中をのぞき込みました。
     そこへ、屋敷の主人が現われました。
    「お前はどこの子だ? 何で毎日の様にここへ来て、井戸の中をのぞき込んでいく」
     主人の持っている刀を見た男の子はブルブルと震えながら、その場ヘペタンと座り込んでしまいました。
    「どうやら、お前は人間の子ではなさそうだな」
     主人は、刀をにぎりしめました。
     すると男の子は、あわてて言いました。
    「あ、あやしい者ではありません。村はずれの川に住む、ただのカッパでございます」
    「カッパだと? カッパが何で、井戸をのぞくんだ?」
    「はい。実は、深い井戸の底にある、きれいな水を見ているだけです。
     この井戸の水は、とてもきれいですから。
     わたしたちカッパはきれいな水を見ると、とても気持ちがいいんです」
    「お前は気持ちいいかもしれんが、家の者たちは気味悪がっておるんだ」
     主人はおどすつもりで、刀を振り上げました。
    「ご、ごかんべんを。命ばかりは、お助けを」
    「いや、ならぬ!」
    「命を助けてくださいましたら、カッパのトゲぬき薬のつくり方を教えますから」
    「トゲぬき薬? はじめて聞くが、それはどんな薬じゃ。つくり方を言ってみろ」
     するとカッパは、まじめな顔をして、
    「ナシの葉とカキの葉と、野山にあるマユミ(→ニシキギ科の落葉小高木)の葉を、それぞれ土用の丑の日(どようのうしのひ)にとって、こまかくちぎってよくまぜて、それから・・・」
    と、トゲぬき薬のつくり方を説明したあと、
    「これはカッパの秘薬です。つくり方は、お屋敷の跡継ぎの方にだけに教えてください」
    と、つけくわえました。
     主人はカッパを許してやると、夏の土用の丑の日を待って薬をつくってみました。
     そして試してみると、本当にどんなトゲでもトゲの方からスルリと抜けてくるのです。
    「なるほど。これは大した物だ」
     屋敷の主人がこのトゲ抜きの薬を村人たちに売ってみると、これが大評判(だいひょうばん)で、つくってもつくってもすぐに売り切れてしまいました。
     トゲ抜きの薬などと思うかもしれませんが、仕事がら、お百姓(ひゃくしょう)はトゲが刺さる事が多いのです。

     その後、屋敷ではカッパの像(ぞう)をつくって、屋敷の裏の井戸のわきにまつったという事です。
       おしまい







    日本の民話 第240話 蛸薬師(たこやくし)



    (出典 www.jalan.net)


     むかしむかし、とても親孝行な、善光(ぜんこう)と言うお坊さんがいました。
     善光は京の町にある小さなお寺で年老いた母親と二人きりで暮らしていましたが、その母子の仲の良さといったら町中で評判になるほどでした。
     でも不幸な事に、善光の母親が突然に重い病にかかってしまい、必死の看病にもかかわらず日に日に病状が悪化していくばかりでした。
     医者も手のほどこしようがなく、とうとう善光の母親は死を待つだけになりました。
     それでも善光は大好きな母親のために出来る事を一心に考え、この世の名残りに母親の食べたい物を食べさせてやりたいと思いました。
     そして母親の具合いが良い時に尋ねると、母親は消え入りそうな声で、
    「蛸(たこ)が食べたい」
    と、言うのです。
    「蛸、ですか・・・」
     むかしのお寺では、肉とか魚を食べてはいけない決まりになっていました。
     それでも善光はためらうことなく、母親に食べさせる蛸を求めて出かけました。
     そしてやっとの思いで蛸を手に入れたのですが、寺の門前まで帰り着いた時、善光は運悪く寺の人間に出会ってしまったのです。
    「おい善光。お前さっき、漁師となにやら話していたが、その手に持っている包みの中身は何だ?」
    (しまった! 見つかってしまった!)
     善光は、その場から逃げ出そうと思いましたが、
    (いやいや、仏につかえる者が、ここで逃げてはいけない)
    と、善光は手に持った包みを開いて、中に入っている蛸を見せました。
     するとそれを見た、寺の人間は、
    「何だ、ただの経本(きょうほん)か」
    と、言って、その場を立ち去ったのです。
    (経本?)
     不思議に思った善光は、包みの中にある物を見てびっくり。
     なんと蛸が、立派な経本に姿を変えていたのです。
     そして寺の人間が立ち去ると、経本は再び蛸に姿を戻りました。
     こうして無事に蛸を口にすることが出来た母親は、どんどん元気を取り戻したのです。
     この事に善光はとても感謝して、寺の名前を蛸薬師(たこやくし)と呼ぶことにしたそうです。
       おしまい







    日本の民話 第239話 湖山長者



    (出典 4.bp.blogspot.com)


    むかしむかし、因幡の国(いなばくに→鳥取県)に湖山長者という、とても欲の深い長者がいました。
     長者の田んぼは大変広かったのですが、家のしきたりで、その田んぼを一日で植えなければならないのです。
     だから田植えの日には夜も明けないうちから、数え切れないほどの早乙女(さおとめ→田んぼを植える女の人)たちがずらりと並んで、いっせいに田植えをはじめるのです。

     ある年の田植えの日の事。
     一匹のサルが子サルをさかさまに背負いながら、山から下りて来ました。
     それを見つけた早乙女たちが、
    「あれ、サルが赤ん坊をさかさにしてるよ」
    「本当だ。今にも落っこちそう」
    「あれ、落ちた」
    「でも、落ちたのに笑っているよ。可愛いいなあ」
    と、口々にはやしたてます。
     すると、ほかの場所で田植えをしていた早乙女たちも、
    「何? 何?」
    と、田植えの手を休めて、サルを見ようとしました。
     これに気がついた湖山長者は、
    「こら! 何をしている! 手を休めるな!」
    と、大声でどなりました。
     ビックリした早乙女たちはあわてて田植えをはじめましたが、サルに見とれていたため、その日の日暮れになっても田植えが終わりそうになかったのです。
     家のしきたりを守ろうと、長者はしきりに早乙女をせかしましたが、どうしても日の暮れるまでに終わらない事がわかると、
    「ようし、こうなればお天道(てんと)さんに戻ってもらうより方法がないわい。なあに、この湖山長者に出来ん事などない」
    と、長者は金の扇(おおぎ)を開くと、お天道さんを扇であおぎ返しました。
     すると、どうでしょう。
     ふしぎな事に西の山に沈もうとしていたお天道さんが、扇の風に押されるようにもう一度天に戻ったではありませんか。
    「それ、今の間に苗(なえ)を植えろ!」
     長者が叫ぶと、早乙女たちは急いで田植えを再開しました。
     そしてようやく田植えが終わったとき、それに合わせるようにお天道さまが沈んだのです。

     さて、この話しは遠くの国まで伝わったので、
    「入り日も招き返す勢いとは、この事だ。わはははははは」
    と、長者は上機嫌です。
     ですが次の朝、長者は目を覚ますと田植えが終わったばかりの田んぼが、一面水びたしではありませんか。
     そしてその水はどんどん広がり、長者の屋敷も水の中に沈んでしまいました。

     それから人々は、その時に出来た湖を『湖山池』と呼ぶようになったという事です。
        おしまい







    日本の民話 第238話 一日遅れのショウブ売り



    (出典 sanuki-asobinin.up.seesaa.net)


    むかしむかし、ある村に、とても美しい娘がいました。
     一人娘だった為、娘が年頃になると隣村から婿さんをむかえました。
     二人は村でも評判の、大変仲の良い夫婦となりました。
     ところが婿さんは美しい嫁さんのそばに少しでも長くいたいので、なかなか畑仕事に行きません。
     そこで町の絵師(えし→絵描き)に嫁さんの絵姿(えすがた)をかいてもらい、仕事をする時はそれを竹ざおにつけて畑に立てておく事にしたのです。
     そんなある時、大風が吹いて来て嫁さんの絵姿が飛ばされてしまいました。
     絵姿は空にのぼって、見えなくなってしまいました。

     さて、この絵姿が落ちたのは、遠い京の都の殿さまの屋敷の庭先でした。
    「なんと! この世にこれほど美しい女がおるとは。お前たち、この絵の女がどこにおるか探してまいれ」
     殿さまはそう言って、絵姿の美女を探し出すよう命じました。
     そして絵姿の美女を見つけると、殿さまはすぐに京の屋敷に連れてこさせました。
     こうして婿さんは、むりやり嫁さんと別れさせられてしまったのです。

     婿さんは来る日も来る日も、嫁さんの事を思い続けていました。
    「ああ、もう一度だけ嫁さんに会いたい。
     嫁さんに会いたい。
     しかし、殿さまの屋敷の中じゃあ・・・」
    と、苦しんでいると、都から来た商人が言いました。
    「五月五日の端午(たんご)の節句(せっく)の日だけは、菖蒲(しょうぶ)売りが殿さまの屋敷の中に入れるそうだ」
     それを聞いた婿さんは喜んで、菖蒲を背負うと都へのぼって行きました。
     けれども五月五日には間に合わず、翌日の五月六日にやっと都につきました。

     一日遅れでは、もう殿さまの屋敷へ出入りする事は出来ません。
     婿さんはガッカリしながら、大きな屋敷のまわりを、
    「ショウブー! ショウブー!」
    と、大声をあげながら、歩いていました。
    「はて? 節句は昨日のはず。六日のショウブ売りとは珍しい」
     屋敷の人は一日遅れのショウブ売りを笑っていましたが、その声を聞いた嫁さんは屋敷の庭を走ると、塀(へい)の外にいる婿さんに声をかけました。
    「あっ、あんた。来てくれたんだね」
    「おおっ、お前、お前か」
    「そう、あたしだよ。今は人目があるから、夜中に迎えに来て」
    「よし、わかった」

     その夜、嫁さんは婿さんと手に手を取って、ふるさとへ逃げて行きました。
     苦しい旅でしたが、二人は山をいくつもこえて、やっと村が見える峠(とうげ)まで逃げて来ました。
    「ほれ、寺の赤い屋根が見える。もう少しだ!」
     婿さんは嫁さんをはげましましたが、嫁さんはその一言を聞いて張り詰めていた気持ちがいっぺんにゆるんでしまったのでしょう。
     その場へ崩れる様に倒れると、そのまま息をひきとってしまいました。
     亡くなった嫁さんのふるさとでは、その後、毎年五月六日に紫色のショウブの花を家にかざって、気の毒な嫁さんの霊(れい)をなぐさめる様になったという事です
       おしまい






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