妖怪・怪談


    日本の民話 第237話 がわたろう祭り



    (出典 www.kwai-raku.com)


    むかしむかし、保福寺(ほうふくじ)と呼ばれるお寺の近くに、『亀郷(かめごう)』という深い淵がありました。
     そこには悪いカッパがいて、夏になると近くを通る子どもを水の中に引っ張り込んでしまうのです。

     ある日、黄石(おうせき)という医者がカッパを改心させようと、知り合いの和尚さんに相談しました。
    「わかりました。それではさっそく、ありがたいお経をカッパに読んで聞かせましょう。たとえカッパでも、心あるものならきっと伝わるはず」
     次の日から、和尚さんは亀郷の淵にかよって、お経を読んで聞かせることにしました。

     それから、十日ほどが過きた夜。
     トントン、トントン。
    と、寺の雨戸を叩く音がしました。
    「おや? 誰だろう?」
     和尚さんが雨戸を開けてやると、なんとそこには一匹のやせこけたカッパがいて、月明かりの下でしょんぼりとうつ向いて立っているのです。
     その姿があまりにも哀れなので、和尚さんがカッパを中に入れてやると、 カッパは畳に手ついて涙を流しました。
    「和尚さん。
     わしは今まで、何人も子どもの命を取ってきた。
     わしにとってはそれはただのイタズラで、今まで一度も悪い事だと思っていなかった。
     それが和尚さんのありがたいお経で、命の大切さがよくわかった。
     自分が今まで、どれだけ悪い事をしたかかも。
     これからはもう決して、悪い事はしない。
     命のある限り殺した子どもたちにわび、ほかの子どもたちを水の事故から守ろうと思う。
     だから和尚さん、わしを許してくれ!」
     それを聞いた和尚さんは、ふかくうなずきました。
    「そうか、よく言ってくれた。
     これで子どもの親たちは、どれだけ安心する事か」
     それを聞いたカッパは何度も何度も頭を下げて、亀郷へ帰って行きました。
     そしてその時から、子どもたちの水の事故が目に見えて少なくなったのです。

     人々はカッパに感謝して、毎年夏の土用になると、キュウリやナスやうどんなどのカッパの好物を亀郷の淵にお供えしたそうです。
       おしまい







    日本の民話 第236話 藺牟田池(いむたいけ)



    (出典 www.pref.kagoshima.jp)


    鹿児島には火山の跡に水がたまって出来た、藺牟田池(いむたいけ)という池があります。
     静かな湖面には、たくさん浮島があって、たくさんのカモがやって来るそうです。
     このお話しは、この藺牟田池がまだ出来ていない頃のお話です。

     むかしむかしの大むかし、ここには夫婦の神さまが暮らしていました。
     二人はとても仲良しですが、二人には子どもがいないので、いつも寂しい思いをしていました。
     そこで二人はこの辺に飛んで来るカモを飼ってみようと相談して、男の神さまがさっそく一羽のカモを手に入れました。
     それから二人はカモを小さなかごに入れて、カモを自分たちの子どものように可愛がったのです。
     最初はかごの中でびくびくしていたカモも、やがて二人になついて、かごから出しても必ず戻ってくるようになりました。

     そんなある日の事、男の神さまが畑へ出かけて、女の神さまが家の仕事をしていると、カゴに入れていたカモがただならぬ声で鳴いたのです。
     女の神さまがあわててカモの所へ行ってみると、どこからか現れた一人の神さまが、可愛いカモを奪って逃げて行ったのです。
    「あなたー! わたしたちの大切なカモが連れて行かれたの! はやく戻ってきてー!」
     女の神さまの叫びに畑へ出かけていた男の神さまはすぐに戻ってきましたが、その後いくら探してもカモを見つける事は出来ませんでした。

     可愛がっていたカモがいなくなったさみしさから、女の神さまは病気になって死んでしまいました。
     大切な妻とカモを失った男の神さまは、毎日滝の様な涙をあふれさせて泣きました。
     その二人の流した悲しみの涙がどんどん集まって、今の藺牟田池(いむたいけ)になったそうです。
     また、カモを盗んだ神さまは自分のした事を反省して、藺牟田池の方に向ってカモを放してやりました。
     それでカモは今でも二人の神さまを探しに、この藺牟田池に飛んでくるそうです。
        おしまい







    日本の民話 第235話 干しな経



    (出典 www.sankei.com)


    むかしむかし、ある家で、法事(ほうじ→身近な人の死んだ日に、みんなで集まってお経をあげたり、お墓参りすること)をする事になりました。
     そこでお寺へお坊さんを呼びに行きましたが、お坊さんが留守(るす)で小僧(こぞう)さんしかいません。
     でも小僧さんなら、お経ぐらいよむ事が出来ます。
    「小僧さん。わたしの家へ、法事に来てください」
    「はいはい、わたしでよかったら、すぐまいります」
     小僧さんはさっそく、お坊さんの衣を着てやって来ました。
    「では、はじめさせていただきます」
     小僧さんがおじぎをして、さて、お経をよもうと思ったら、ふところにお経の本がありません。
     あわててやって来たので、持って来るのを忘れてしまったのです。
     この小僧さんは、本がなくてはお経がよめません。
    (こりゃ、困ったぞ)
     そう思って窓の外を見ると、軒下(のきした)になっぱの束(たば)が干してありました。
     小僧さんは、いかにもお経のように、その数をかぞえはじめました。
    「一れん、二れん、三れん、四れん、ああ、五れん、六れん、・・・」
     一れんというのは、なっぱをつるしてある一本のナワのことで、一れん、二れんとかぞえます。
     小僧さんはなっぱの束をかぞえ終わると、またはじめから、
    「一れん、二れん、三れん、四れん、・・・」
    と、そればっかりです。
     窓の外でそれを聞いていた子どもが、小僧さんに言いました。
    「小僧さん、それ、なんというお経じゃ」
    「これは干しな経といって、とてもありがたいお経じゃ」
    「へえ、そんなら、あっちにもまだ、二、三れん、つってあるよ」
     すると小僧さんは、
    「いや、それはこの次に来たとき、よむつもりじゃ」
    と、言ったという事です。
       おしまい







    日本の民話 第234話 二羽のカモ



    (出典 previews.123rf.com)


    二羽のカルガモカモ!

    (出典 Youtube)


     むかしむかし、京都に一人の男が住んでいました。
     男の家は貧乏でしたが、お嫁さんと二人で仲良く暮らしていました。
     ある日の事、お嫁さんに赤ちゃんが生まれました。
     ところがお嫁さんはお産のために体が弱っていたので、あまりお乳が出ません。
     そこでお嫁さんはお肉を食べて力を付けようと思い、夫に頼みました。
    「わたし、お肉を食べたいのですけれど・・・」
     それを聞いて男は、
    「それは、もっともだ。肉を食べて、はやく元気になってもらわないとな。お前のためにも、赤ん坊のためにも」
    と、言いましたが、しかし男は貧乏で、お肉を買うお金がありません。
     男はいろいろと考えたあげく、
    「よし、そうだ。自分で鳥を取りにいこう」
    と、言いました。

     次の日、男は朝早く起きると、弓矢を持って家を出ました。
     そして、ミミドロ池という池にやって来ました。
     この池にはあまり人が来ないので、きっと水鳥がたくさんいると思ったのです。
     男は池まで来ると岸に生えた草の中に身をかくして、じっと水の上を見つめていました。
     すると一羽のカモが、草むらのかげから泳いで来ました。
     続いてもう一羽がやって来て、二羽のカモは仲良くこちらに近づいてきます。
     それは、メスとオスのカモでした。
     男はそっと、弓に矢をつがえましたが、
    (夫婦だろうか? 仲の良いカモを殺すなんて、かわいそうだ)
    と、思い弓と矢を置きました。
     しかし男は、また思い直しました。
     お肉を食べたがっている、お嫁さんの事を思ったからです。
    (仕方ない。カモよ、許しておくれ)
     男が矢を放つと、矢は真っ直ぐにオスのカモに当たりました。
    「それ、当たったぞ!」
     男は大急ぎで池に入って獲物を拾い上げると、すぐに家へ帰りました。
     男はさっそく、お嫁さんにカモの取れた事を話しました。
     そして、
    「あすの朝は、カモを料理して食べような」
    と、言うと、カモをさおにかけて寝ました。

     さて、その夜中の事です。
     男は、さおにかけたカモがバタバタと羽を動かしている音に目を覚ましました。
    「おや? あのカモが、生きかえったのかな?」
     男が不思議に思いながら、あかりを持ってさおのところに行きました。
     すると昼に取ってきたカモは死んだままで、そのそばを一羽のカモがバタバタと羽ばたいているではありませんか。
    「あっ! メスのカモだ。
     ミミドロ池でオスとならんで泳いでいた、あのメスガモに違いない。
     殺されたオスをしたって、あとをつけてきたのか」
     男はメスのカモを、じっと見つめました。
     カモはあかりを持った人間がそばに立っているのに少しも恐れる様子はなく、死んだオスのまわりを離れようとはしません。
     男はつい、ポロリと涙をこぼしました。
     すると、外の音に起き出したお嫁さんもやって来ました。
     お嫁さんは男の隣でじっとカモを見つめると、男に言いました。
    「カモも人間も、相手を想う気持ちは一緒なのですね。ねえ、明日あのカモのお墓を作ってあげましょう」
    「しかし、カモを食べないとお前の体は・・・」
    「いいえ。わたしは病気ではありません。日がたてば、また元気になれますから」
     その朝、男はオスガモを持って、また池にやって来ました。
     そしてていねいにうずめてやると、小さなお墓を作ってやりました。

     それからしばらくたつと、お嫁さんはすっかり元気になりました。
     そして赤ちゃんと三人で、しあわせに暮らしたという事です。
       おしまい







    日本の民話 第233話  おネズミがお死んでる



    (出典 cdn.dears.media)


     むかしむかし、ある田舎の娘さんが、町のお金持ちの家へ働きに行きました。
     でも、田舎で育った娘さんは、ていねいな言葉をうまく使うことができません。
     お客さんに、お茶を出すときも、
     「茶を飲め」
     などと言うので、お金持ちのおかみさんは困ってしまいました。
     そこで娘さんに、
    「お客さんには、ていねいな言葉を使わなくてはいけません。
     何でも言葉の初めに、『お』という字をつけて言いなさい。
     そうすれば、ていねいな言葉になりますよ」
    と、注意したのです。
    (茶に『お』をつければ、お茶。なるほど、『お』という字をつければいいんだな)
     それから娘さんは、いろいろな言葉に『お』という字をつけてみました。
     ネコは→おネコ、カラスは→おカラス、カボチャは→おカボチャ。
    (これで、もう大丈夫!)
     娘さんは『お』という字をつけた言葉を、早く使いたくてたまりません。
     家の前でウロウロしていたら、ネズミがどぶに落ちて死んでいました。
     娘さんはさっそく、おかみさんの部屋にかけつけて、
    「おおかみさん、おネズミがおどぶに落ちてお死んでる」
    と、言いました。
     おかみさんと一緒にいたお客さんは、それを聞いて大笑いです。
     お客さんが帰ったあと、おかみさんは娘さんに言いました。
    「何でもかんでも、『お』という字をつけてはいけません。役に立つときだけ、『お』の字をつけなさい」
    (そうか、役に立つときだけか)
     さて、その晩のこと。
     お金持ちの家族が晩ごはんを食べているところへ、娘さんがお味噌汁を運んできました。
     ふとおかみさんを見ると、おかみさんのおでこに、おひたしのなっぱがついています。
     そこで娘さんは、大声で言いました。
    「かみさん、でこにひたしのなっぱがついて、かしいだよ」
    (・・・・・・・ああ、この娘には、何と言ったらわかるのだろう)
     おかみさんは、ガッカリして、
    「そういう時は、『おかみさん、おでこにおひたしのなっぱがついて、おかしいですよ』と言うんですよ」
    と、言い聞かせました。
     すると娘さんは、ニッコリわらって、
    「おやっぱり『お』の字をおつけたほうが、おいいんだべ」
    と、言ったのです。
       おしまい






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